漫画「草」のワンシーン=漫画家・金錦淑提供
[ソウル=ソ・エヨン、キム・ウニョン]
踏まれても立ち上がる「草」。
旧日本軍の慰安婦被害者、李玉善(イ・オクソン)さんの証言をもとに描かれた金錦淑(キム・クムスク)さんの漫画「草」が持つ意味だ。
同作品は、9月14日(現地時間)にフランスの日刊紙「ヒューマニティ(L’Humanité)」が主催する「第1回ヒューマニティ漫画賞」の審査委員特別賞を受賞した。同漫画賞は年に1回、人間の生と人権を扱った漫画作品を選定するもので、今年創設された。
同賞の審査委員は、同作品について「韓国の歴史的悲劇の一部分を、慰安婦被害者の視点から描いた」とし、「驚くほどの強い生きることへの意志にあふれている。その意志と1940年代の韓国社会の状況が上手く表現された」と評価した。
同作品は2017年から韓国語・英語・フランス語・イタリア語で出版された。来年には、日本語・スペイン語・ポルトガル語・アラビア語で出版される。
9月26日に行われたコリアネットとのインタビューで、漫画家の金さんは、同作品について「韓日歴史の問題だけではない」とし、「基本的な権利が奪われた人間がどのように生きていくかを描いた」と説明した。
漫画家・金錦淑さん(左)と慰安婦被害者の李玉善さん(中)=漫画家・金錦淑提供
漫画家・金錦淑さんと慰安婦被害者の李玉善さんの初対面
金さんは1993年フランスで、漫画「慰安婦レポート」に関する通訳と翻訳をしながら、慰安婦被害者のことを知った。
そして、慰安婦被害者の証言をもとに短編漫画「秘密」を描きはじめ、2010年に出版。慰安婦被害者の李さんに出会ってから、慰安婦問題をもっと深く扱った作品を作りたいと思ったのが、漫画「草」を描いたきっかけだ。
二人の出会いは運命だった。
李さんは、旧日本軍の慰安婦被害者が共同で生活する施設「ナヌムの家」で、金さんが置いていった漫画「コケンイ」を読んだ。李さんは子供時代を思い出し、それが縁に繋がって、自分の人生が漫画になった。
金さんは、李さんとの作業について、「過去の傷に向き合うのはとても難しい」とし、「彼女(李さん)は、強い生命力にあふれ、ユーモアも兼ね備えている」と語った。また、「韓国語版が出版された時、その表紙を見ながら涙を流した李さんの姿が、いまだに忘れられない」と付け加えた。
漫画「草」の英語版(左)とフランス語版=Drawn & Quarterly(左)とDelcourt
世界が共感する「人権問題」
フランスでは、日本漫画の市場が大きいため、金さんにとって同作品の受賞は特別な意味を持つ。日本のクラウドファンディングでの支援総額が、出版に必要な目標金額に達成し、来年の2月に日本語版出版を目標としている。
これに対して、金さんは「被害者だけでなく、悲しい歴史の真実を全世界に知らせる」と所感を述べた。
また、慰安婦被害者について「単なる被害者ではなく平和や人権運動家であり、生きている歴史そのものだ」とし、「私たちは忘れてはいけない」と強調した。
金さんは、母親が離散家族の一員だと紹介し、それに関する漫画を準備している。「人の心に響く作品を製作したい」とし、「漫画を通じて弱者の側に立ちたい」と将来の目標を述べた。
xuaiy@korea.kr