経済

2015.01.07

朝鮮半島に初めて自転車が登場したのは、文明開化の風が吹き、西洋の文物が入ってくるようになった19世紀末だ。韓国で初めて自転車に乗ったのは、独立協会の設立を主導した開化派のユン・チホ(尹致昊)だという記録もあれば、開化期に韓国に来た西洋の宣教師と軍人だという記録もある。

ソウルYMCAの名誉総務を務めていたチョン・テクブ(全澤鳧)氏は、1998年に発刊した著書『ユン・チホの生涯と思想』で、「六堂」チェ・ナムソン(崔南善)から聞いたユン・チホ(1865~1945)の自転車にまつわるエピソードを紹介している。この本には、「ユン・チホは自転車を輸入し、韓国で最初に自転車に乗った人だ。子どもの頃、彼が自転車に乗ってチョンロ(鍾路)交差点を走っているのを目にし、いつか自分もああなりたいと、うらやましく思ったと崔南善は語った」と記されている。

米国人宣教師で医師だったホレイス・アレン(Horace Allen)は、『朝鮮見聞記』」に自転車に関する記録を残している。ある米国人将校が1884年にチェムルポ(済物浦)に停泊中の船から車輪の付いた旧式の自転車を1台持ち出した。アレンは、その将校が自転車に乗る光景を一目見ようと多くの群衆が集まって来たと記している。

アレンの後任として高宗(コジョン)の主治医となったカナダ人宣教師のオリバー・エビスン(Oliver Avison)も自転車に関する記録を残した。彼は『旧韓末、40数年の風景』という著書で、「宮廷に出入りする際に自転車で行くこともあり、自転車に乗っている姿を高宗に見せたことがある」と記している。

韓国で自転車が生産されるようになったのは1950年代初頭で、韓国最初の自転車メーカーはサムチョンリ(三千里)自転車だ。

サムチョンリ自転車は、キア(起亜)自動車の創業者であるキム・チョルホ氏が1944年に設立したキョンソン(京城)精工が前身だ。自転車部品メーカーとしてスタートした同社は、1952年に「キア産業」に社名を変更し、韓国最初の自転車「サムチョンリ号」を生産し、関連産業の土台を築いていった。1979年にキア産業から分社化してサムチョンリ自転車工業(株)として新たなスタートを切り、1985年にはキアグループから完全に分離・独立した。


1952년 생산된 한국 최초의 자전거 '3000리호'

1952年に生産された韓国最初の自転車「サムチョンリ号」



「サムチョンリ(三千里)」という社名は、「朝鮮半島三千里を横断する自転車」という意味で名付けられた。かつて韓国は「三千里錦繍江山」と呼ばれ、朝鮮半島最南端の全羅南道ヘナム(海南)の南端からソウルまでが1千里(1里は約400メートル)、ソウルから咸鏡北道オンソン(穩城)までが2千里で、合わせると3千里(約1178キロ)だ。

サムチョンリ自転車は、1965年から自転車の海外輸出を開始し、自転車では初めて1968年にKSマーク(韓国標準規格)を取得した。1987年には韓国で初めて年間の自転車生産台数が100万台を突破し、貿易の日に「1千万ドル輸出塔」を受賞するなど、大きな飛躍を遂げた。

その後もサムチョンリ自転車は、現状に満足することなく、常に新しい製品を開発してきた。1991年にはサムチョンリ自転車の統合ブランド「レスポ(Lespo)」を発表し、5年後には高級自転車専門ブランド「チェロ(Cello)」を立ち上げた。「レスポ」は「レジャー」と「スポーツ」の合成語で、幼児用自転車やマウンテンバイク、女性用、競技用、ハイブリッド、電動自転車など、ほぼすべての種類の製品の代表ブランドだ。また、高級マウンテンバイク・ブランド「アパランチア(Appalanchia)」や普及型ブランドの「ハウンド(Hound)」と「ネクスト(Next)」なども発表した。

산악용자전거인 '아팔란치아' 시리즈

マウンテンバイク「アパランチア」シリーズ



장거리용 자전거인 '로드바이크 XRS'

長距離用自転車「ロードバイクXRS」



サムチョンリ自転車は、独自の技術開発にも取り組んできた。また、新技術の採用にも力を入れ、2000年に電気・電動スクーターを開発して以来、これまで電動自転車を生産・供給してきた。最近の電動自転車は通常の自転車と区別がつかないほど完成度が高く、軽量化も進められた。

同社は、最近人気の軽量ハイブリッド自転車のフレームの強度向上のため、2013年から従来のものよりも強度が50%高いアルミチューブを使っている。また、子どもたちの安全に考慮し、。軸やハンドルなどの先のとがった部分にプラスチックのカバーを被せたり、チェーンケースに安全カバーを取り付けるなど、子ども用自転車に様々な安全装置を施しているほか、子ども用自転車の全製品に有害物質が含まれていない安全な素材でできた部品だけを使用している。

삼천리자전거가 2014년 내놓은 전기자전거‘팬텀’시리즈

サムチョンリ自転車が2014年に発売した電動自転車「ファントム」シリーズ



サムチョンリ自転車は、技術開発だけでなく、健康ブームに便乗してマウンテンバイク大会や自転車体験団を運営するなど、自転車文化の発信にも取り組んでいる。

2010년 준공된 삼천리자전거의 경기도 의왕공장

2010年に完成したサムチョンリ自転車の京畿道義王工場



コリアネット イム・ジェオン記者
写真提供:サムチョンリ自転車
jun2@korea.kr