文化

2025.05.28

主人公のドンドンは、いつも一人ぼっちだ。ある日、ビー玉を買いに文房具屋に行ったドンドンは、ビー玉ではなくあめだまを買った。あめだまを一口なめると、優しい声が聞こえてくる。死んだおばあちゃんの声、ソファの声、子犬の声、そしてお父さんの本音までがすべて聞こえる。このあめだまがあれば、勇気を出せそうだ。誰かに声をかけてみなくちゃ。

写真は、アニメ『あめだま』のワンシーン。主人公のドンドンが文房具店であめだまを買う様子=ロッテカルチャーワークス

写真は、アニメ『あめだま』のワンシーン。主人公のドンドンが文房具店であめだまを買う様子=ロッテカルチャーワークス


[ソウル=ソ・エヨン]
[映像=東映アニメーション公式YouTubeチャンネル]

3月、第97回アカデミー授賞式で短編アニメーション部門にノミネートされた『あめだま』が28日、韓国で公開される。

『あめだま』は韓国の絵本作家ペク・ヒナの『あめだま』、『ぼくは犬や』の2つの原作をもとにしたアニメである。ペク・ヒナ作家は、2020年に韓国人としては初めて「アストリッド・リンドグレーン記念文学賞 」を受賞した。製作は『Dr.スランプ』、『ドラゴンボール』、『ワンピース』などの演出を担当した日本東映アニメーションの西尾大介監督と『プリキュア』シリーズの鷲尾天プロデューサー。日本が制作したアニメーションのうち、韓国の児童文学を原作とした初の作品だ。

23日、ソウル・広津(クァンジン)区にあるロッテシネマ建大(コンデ)入口店ではアニメーション「あめだま」の記者懇談会が行われた。鷲尾天プロデューサーは、日本の出版社から勧められて原作を読み、魅力的なストーリーにひかれてアニメを製作することにしたと述べた。

アニメ『あめだま』は、原作に忠実につくられている。絵本に登場する粘土人形の質感をそのまま再現し、韓国の街並み、団地、ハングルの看板などを背景に、韓国的な情緒を最大限にいかしている。東映が作ったアニメーションモデルとシナリオは、ペク・ヒナ作家の意見を最大限に反映し、修正を重ねて完成した。

ペク・ヒナ作家は「世界的に人気が出るのはありがたいことではあるが、もしかしたら原作のアイデンティティが揺らぐのではないかという懸念もあった」とし、「韓国ならではの背景と情緒、原作のオリジナリティを保つように、製作陣が細かい部分まで気を使ってくださった。心から感謝している」と述べた。

アニメ「あめだま」のシーン=ロッテカルチャーワークス

アニメ「あめだま」のシーン=ロッテカルチャーワークス


「あめだま」は、昨年ニューヨーク国際子供映画祭のアニメーション短編部門で、審査委員賞と観客賞をはじめ、世界有数の映画祭で計8部門を受賞した。児童向けコンテンツを超えて、子供と大人が一緒に共感できるメッセージ性があると評価された。また、人間関係が希薄化する現代において、日常的な寂しさを抱える時代の普遍的なテーマを繊細に描いたと評された。

鷲尾天プロデューサーは「短編アニメーションは商業的に成功するのが容易ではないということを知りながらも、何とか作ってみたかった」とし、「良い作品にしたいという気持ちで始めたが、アカデミー最終ノミネートは全く予想していなかった」と話した。

ペク・ヒナ作家は「絵本を作る時も受賞などの結果を気にするよりは、作品の完成度を重要視した」と話した。

鷲尾天プロデューサーは「あめだま」の他にも、韓国のウェブトゥーンを原作としたアニメーションプロジェクトを企画していると明らかにした。さらに「まだ開始の段階なので、完成するまで時間がかかりそうだ」とし、「日本とか韓国とか、国に関係なく良い作品を作れば良いと考えている」と話した。

「あめだま」の記者懇談会で、記者たちの質問に答えるプロデューサーの鷲尾天(中央)=23日、ソウル・広津区、ソ・エヨン

「あめだま」の記者懇談会で、記者たちの質問に答えるプロデューサーの鷲尾天(中央)=23日、ソウル・広津区、ソ・エヨン


xuaiy@korea.kr