文化

2014.03.11

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チェックの鹿撃ち帽と口にくわえたパイプがトレードマークのシャーロック・ホームズ(Sherlock Holmes)。推理力が鋭く、外見と行動を見ただけでその人の職業と性格をピタリと当てる名探偵だ。身長180センチに鷲鼻のホームズは、1887年に英国人作家アーサー・コナン・ドイル(Arthur Conan Doyle)が執筆した推理小説「緋色の研究(A Study in Scarlet)」に登場して以来約130年が過ぎた今も、ミュージカルや演劇、映画、テレビドラマ、文学など大衆文化界を魅了している。

최근 막이 오른 뮤지컬 ‘셜록홈즈2: 블러디 게임의 한 장면 (사진: 클립서비스)

現在上演中のミュージカル「シャーロックホームズ2:ブラッディゲーム」のワンシーン(写真提供:クリップサービス)


シャーロックホームズは、今年の韓国の大衆文化界の「新たなキーワード」になりつつある。地上波放送「KBS2」は米国よりも先に英国ドラマ「シャーロックホームズ3」を直輸入して放映し、演劇の舞台ではシャーロックホームズをモチーフにした作品が相次いで上演されている。ソウル江南区のBBCアートセンターでは現在、ミュージカル「シャーロックホームズ2:ブロッディゲーム」が上演中だ。同作品は、引き込まれるストーリー展開と音楽で2011年に韓国のミュージカル賞を総なめにした「シャーロックホームズ~アンダーソン家の秘密~」の続編だ。ホームズのキャラクターはそのままだが、ストーリーが新たにつくられている。ホームズが生存していた1888年のビクトリア女王時代に実在した連続殺人犯ジャック・ザ・リッパーが登場する。

同作品の演出を担当したノ・ウソンさんは、「ホームズは19世紀末の人物だが、21世紀型の英雄だ。正義感よりも自分の脳を満足させるために事件の真相を暴く。これまでの英雄と大きく違うところに魅かれる」と説明した。

추리소설에 코미디가 가미된 연극 ‘셜록: 벌스톤의 비밀’ (사진: 휴먼컴퍼니)

推理小説にコミカルな要素が加えられた演劇「シャーロック:ボルストンの秘密」(写真提供:ヒューマンカンパニー)


大学路では、昨年に続いて公演中の演劇「シャーロック:ボルストンの秘密」が盛況だ。推理小説本来のスリルとサスペンスにコミカルな要素が加えられている。同作品は、アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズの長編小説の一つ「恐怖の谷」を脚色したもので、ホームズの家に謎の暗号が書かれた手紙が舞い込む場面で幕が開く。ホームズが手紙に書かれた暗号を解こうとした瞬間、ダグラスが銃殺されたという知らせを聞く。原作を見たことのない人でも、思わずのめり込んでしまうような興味深い作品だ。

영국 배우 베네딕트 컴버배치 주연의 드라마 ‘셜록’ (사진: 화면 캡쳐)

俳優のベネディクト・カンバーバッチ主演のドラマ「シャーロック」(写真:テレビの画像)



シャーロックホームズをモチーフにした最近の作品といえば、何といっても俳優のベネディクト・カンバーバッチ(Benedict Cumberbatch)が主演を演じた「シャーロック」だ。現代風にアレンジされた「シャーロック3」が先日まで放映されていた。原作のように社交性というものを微塵も見せない冷徹な人物として描かれている。「シャーロック3」の放送を前にユーチューブで公開された予告編は、わずか5日間で再生回数10万回を突破した。

シャーロック・ホームズブームは、文学界も例外ではない。この1~2年の間にアンソニー・ホロヴィッツ(Anthony Horowitz)の『シャーロックホームズ:シルクハウスの秘密(The House of Silk)』やユン・ヘファンの『ホームズが送った手紙』、解説書『注釈付きシャーロックホームズ』といった小説が出版されるなど、大ブームを呼んでいる。2002年に韓国で初めて出版された『シャーロックホームズ全集』も順調な売れ行きだ。

韓国で初めて『シャーロック全集』を出版したファングムガジのキム・ジュニョク部長は、「10冊セットの『シャーロックホームズ全集』は、これまで200万冊以上販売された」と話した。

‘셜록 홈즈: 실크하우스의 비밀’의 표지. 문학계에서도 셜록 홈즈 관련 서적이 인기를 끌고 있다. (사진: 황금가지)

「シャーロックホームズ:シルクハウスの秘密」の表紙。文学界でもシャーロックホームズ関連の書籍が人気を集めている(写真提供:ファングムガジ)


専門家らは、シャーロックホームズの人気の秘密はホームズという人物に内在する多様な面貌にあるという。ちょっとした手がかりで事件の真相を解いてしまう天才だが、周りが見えず現実性に乏しい変わり者のため、様々なアレンジがきくのだ。

ジャンル文学評論家のキム・ボンソク氏は、「ホームズは、初めて登場した約100年前よりもむしろ現代のほうが似合うキャラクターなので、現代風のアレンジが十分可能だ。現代のシャーロックホームズのマニアたちがホームズを“都会暮らしのがさつな男”と称するのもそうした理由」と説明した。

英国ドラマ「シャーロック」でスマートフォンを使いこなし、オートバイでロンドンの街を疾走する現代化されたシャーロックホームズの姿に違和感を感じないのもそうした理由だという。それに加え、「CSI:科学捜査班」といった科学捜査ドラマブームが起こり、推理物の人気が高まっているのも要因だ。

探偵・推理小説マニアを自称するブロガーのチョン・ヨンチャンさんは、「ホームズは善悪が共存する人物なので、創作者らが彼の性格の一部を極大化し、全く違う人物にアレンジしている。見る側としてはいろいろなホームズが見られるので、ドラマや映画、公演などジャンルを問わずマニアが増えている」と話している。

コリアネット イム・ジェオン記者
jun2@korea.kr