
イ・ソッキさんが国立民俗博物館に寄贈した手紙。1946年に彼女の母親が書いてくれたもので、嫁入りした娘を想う母の気持ちが込められている
「心惜しくもあなたが行ってしまったあの日は、雨の中に無事着いたか心配でしたが、無事到着したという便りに安心しました。
突然の再会で深い話もできず、恋しかった気持ちも伝えられないまま、去りいく車の速いこと。
窓にしがみついて見ようとしても見えませんでした。後で顔だけは見れました。あなたさえ良ければ私は大丈夫です……」
これは1946年、両班家(官僚・支配階級)に嫁入りした娘に送った母の手紙である。予告なしに実家を訪れた娘に対する母の哀れさと切なさが伝わってくる。
国立民俗博物館は最近発行したウェブマガジンで、2012年の寄贈当時99歳だったイ・ソッキさんのポソン(足袋)型と手紙を公開した。1914年に京畿道(キョンギド)楊平(ヤンピョン)で生まれたイさんが生きた100年は、植民地時代から韓国戦争を経て現在に至る韓半島激変の時期だった。国立民俗博物館はイさんの遺物から激変の時代を波乱万丈に生きた女性の人生を垣間見せようとした。

イ・ソッキさんが寄贈したポソン型。彼女の母が書いた祈りの言葉とかかとに当てた紙の部分が特徴的だ
イさんのもう一つの遺物のポソン型からも母の想いが窺える。このポソン型は、彼女の母親が娘のために手作りしたもの。ポソン型はポソン作りの基礎となる下絵だ。当時の靴下代わりだったポソンは、老若男女の誰もが履いていたため、常にたくさん用意しておかなければならなかったうえ、ポソン作りはもっぱら女性の仕事だった。イさんの母親は嫁入りした娘の家を訪れ、自らこのポソン型を作ったという。
母は娘への愛情が、ポソン型にハングルで丁寧に書かれてある。「甲寅生複本、寿命長寿、富如石崇、子孫昌盛(갑인생복본, 슈명장슈, 부여석슝, 자손창셩)」と書かれた文言の「甲寅生複本」とは、イ・ソッキさんが生まれた甲寅年(1914年)とポソン型を意味する「複本」を並べたもの。「寿命長寿」とは長生きを願い、「富如石崇」とは中国の石崇のように金持ちになることを祈願する内容だ。また「子孫昌盛」とは子供をたくさん生んで和気あいあいな家庭を築くことを願う意味で、母親が娘の幸せを祈る気持ちが良く表現されている。
このポソン型で注目すべきもう1つは、かかとに当てられた黄色い韓紙だ。この部分に紙を当てると家族それぞれのサイズに合ったポソンが作りやすくなる。娘の手間を省くための母親の思いやりと知恵が窺える。
コリアネット ユン・ソジョン記者
写真: 国立民俗博物館
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