文化

2024.06.17

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12回茂朱サンゴル映画祭が5日から9日まで全羅北道・茂朱郡の一帯で開かれた。写真は、茂朱藤の木運動場に設置されたフォトゾーン。


[茂朱=キル・ギュヨン]
[写真=キル・ギュヨン]

人口2万3千人の都市、茂朱(ムジュ)。青々と草木が茂る夏が来ると、静かなサンゴル(山)は熱気に包まれる。「茂朱サンゴル映画祭」は、「一度も来たことのない人はいても、一度しか来なかった人はいない」と言われる。今年もたくさんの映画ファンたちが茂朱を訪れた。日常生活での悩みやストレスを吹っ飛ばし、自然の中で映画を満喫するためだ。

「茂朱サンゴル映画祭」は、今年で12回目を迎える。5日から9日までの5日間、国内外の最新映画からドキュメンタリーまで21カ国・96本の映画を上映した。茂朱の豊かな自然の中で多彩な作品が上映された。ベルリン映画祭で好評を得たキム・ヘヨン監督の「大丈夫、大丈夫!」(2023)、全州映画祭の開幕作である三宅翔監督の「夜明けのすべて」(2024)、カンヌ映画祭でパルムドールを受賞したジュスティーヌ・トリエ監督の「落下の解剖学」(2024)など、多数の素晴らしい作品を披露し、観客に楽しさと感動を届けた。

俳優研究所のペク・ウンハ所長とネクストアクターに選ばれた俳優のコ・ミンシの野外トークショー。

俳優研究所のペク・ウンハ所長とネクストアクターに選ばれた俳優のコ・ミンシの野外トークショー。


KOREA.netは、映画祭3日目の7日に会場を訪れた。車から降りると、さわやかな森の香りがし、心が安らぐ感じがした。故チョン・ギヨン建築家が設計した茂朱藤の木運動場は、低い山の下に広がる風景が印象的だった。観客たちは広々とした芝生に、レジャーシートを敷いてフェスティバルを楽しむ準備をしていた。運動場をのんびりと歩いていると、舞台の上に見覚えのある顔が目に入った。今年、茂朱サンゴル映画祭のネクストアクターに選ばれた俳優のコ・ミンシだった。ネットフリックスシリーズ「恋するアプリ Love Alarm」、「Sweet Home」の主役を務めたコ・ミンシは「茂朱サンゴル映画祭で、たくさんの映画ファンたちに出会った」とし、「初めて俳優としてデビューした時のことを思い出すことができ、よかった」と笑顔で話した。

貧富の差や出産に関する内容を映画にしたチャン・ミンジュン監督の「デリバリー」を見るために、茂朱芸術体育文化館に足を運んだ。でもまずは、腹ごしらえからだ。周りを見ると、広場の片隅におやつのブースがたくさんあった。キムチチヂミ、おにぎり、トッポッキをはじめ、かき氷、コーヒー、お茶など、いろいろ用意されていた。知らぬ間にツバが湧いてきた。2千ウォンから1万ウォンというリーズナブルな値段と、環境にやさしいリユース容器が印象的だった。MZ世代(1981~2010年生まれ)を狙ったマグカップやバッジ、キーホルダー、マグネットなどのグッズも目を引いた。

茂朱は老齢人口が60%以上を占める。このような小さな村でどのようにして映画祭が始まったのか知りたくなった。「当時、『ヒーリングキャンプ』というTV番組が話題だった。キャンプを通して癒しを求めるという形をモチーフにした。日常の疲れを、茂朱でリフレッシュするということがトレンドになると思った」 第1回の時から茂朱サンゴル映画祭を企画してきたチョ・ジフン氏は、あるマスコミとのインタビューでこのように答えたという。派手なタイトルもなしに地味に始まった映画祭が、予想外の人気を得て、いつのまにか若者の間でも話題の映画祭として位置づけられた。

10CMのライブ公演。

10CMのライブ公演。


夜になると、藤の木運動場は「10CM」のライブで盛り上がった。初夏にピッタリのロマンチックなメロディーに観客は熱狂した。次は、大スクリーンにフレッド・C・ニューメイヤー、サム・テイラー監督のモノクロのサイレント映画の「GIRL SHY」が上映された。女性の前に立つと、どもってしまう男に扮したハロルド・ロイドが演じるコメディーを見た観客は大爆笑した。木管楽器演奏者のパク・ギフン、ピアニストのケ・スジョン、ジャズドラマーのチョ・ソンジュンの特別ライブは、サイレント映画に躍動感を与えた。夏の夜、森の香りが漂う自然の中で、草虫の音を聞きながら映画を鑑賞するなんて最高の気分だった。都心の映画祭とは差別化された茂朱サンゴル映画祭でしか味わえない特別な経験だ。

今年の茂朱サンゴル映画祭には、3万5000人あまりの観客が訪れ、無事終了した。自然の中で活気あふれるフェスティバルが行われるというユニークな茂朱サンゴル映画祭。観客たちは日常に戻り、茂朱は静まり返った。しかし、また来年の夏になると、ホタルの故郷である茂朱は映画を愛する人たちでにぎわうだろう。

フレッド・ニューメイヤー、サム・テイラー監督のサイレント映画である「GIRL SHY」(1924)。

フレッド・ニューメイヤー、サム・テイラー監督のサイレント映画である「GIRL SHY」(1924)。


gilkyuyoung@korea.kr