西大門刑務所のイ・ジンヒ歴史館長=西大門刑務所歴史館
[イ・ジヘ]
1919年3月1日は、韓国が日本の植民地支配に抵抗し、非暴力万歳運動を通して、韓国の独立意志を世界に発信した歴史的な日である。
3·1運動は、韓国臨時政府の樹立や光復軍の編成などの民族運動につながった。一方、中国の5·4運動(反帝国主義革命運動)、インドの非暴力不服従運動、ベトナム、フィリピン、エジプトの独立運動にも影響を及ぼした。
第106周年3·1運動を控え、西大門刑務所のイ・ジンヒ歴史館長に韓国の独立運動の歴史と意味について聞いてみよう。
ー西大門刑務所歴史館はどのような場所なのか。
西大門刑務所は、日本帝国主義が建てた近代式の監獄だ。1908年から1987年までの80年間、使われた。日本による植民地時代には、数多くの独立運動家が、光復後には民主化運動家がここに捕まえられていた。
1967年にソウル拘置所に名前が変わり、1987年には京畿道(キョンギド)・義王市(ウィワンシ)に移された。嫌悪施設と見なされ、撤去になる危機もあった。しかし、独立運動家の子孫や民主化運動家の反対により、一部の施設のみ撤去されることになった。以後、一部が独立公園として造成され、1998年11月5日に西大門刑務所歴史館として開館した。現在は、年間60万人が訪れる歴史教育の場として位置づけられている。
ソウル西大門刑務所歴史館の全景=ソウル・西大門区、西大門刑務所歴史館
ー西大門刑務所に収容された独立運動家について知りたい。
代表的な独立運動家としては、大韓民国臨時政府の主席を務めた金九(キム・グ、1910年代)、天安(チョンアン)アウネ万歳運動を主導した柳寛順(ユ・グァンスン、1919~1920)、米州地域と臨時政府で活動した安昌浩(アン・チャンホ、1937年に仮釈放、1938年逝去)、解放後の建国準備委員会を率いた呂運亨(ヨ・ウンヒョン)などがいる。
西大門刑務所歴史館は特定人物よりは事件を中心に展示を構成した。独立運動は個人の努力ではなく、名もなき多くの独立運動家の献身により成り立つものであるからだ。
西大門刑務所の壁にぎっしりと貼られた独立運動家たちのマグショット=イ・ジヘ
ー感銘を受けた歴史的瞬間や人物がいたら紹介してほしい。
3·1運動以後、西大門刑務所には数多くの独立運動家が収容された。拷問による後遺症で殉国した方も多い。
妊娠した状態で収容された女性たちは、出産のために保釈・釈放され、再び収容されることもあった。刑務所で、生まれたばかりの赤ちゃんと1年間暮らしたことさえあった。非衛生的で劣悪な環境にもかかわらず、一緒におむつを洗ったり、食べ物を分け合ったりしながら耐えたという。
姜宇奎(カン・ウギュ)医師のようが高齢の独立運動家もいた。当時64歳の年齢にもかかわらず、1919年に朝鮮総督である斎藤実を暗殺するために爆弾を投げた。そして、西大門刑務所に収容され、1920年に絞首刑で殉国した。
拷問の再現。箱の内側に鋭い釘を打ち込み、人を箱の中に入れて激しく振った(左)。水の中に頭を強制的に入れたり、鼻や口に水を注いだ(右)=イ・ジヘ
ー西大門刑務所歴史館が伝えたいメッセージは何か。
歴史を忘れる民族に未来はない」という言葉がある。過去を忘れてはならない。そして、過去から教訓を得なければならない。西大門刑務所は、自由と闘争の場であったことを知ってほしい。
西大門刑務所歴史館を訪れる外国人の方たちには、韓国が日本の植民地支配にどのように対抗し、独立運動を展開したのか、そして独立運動家たちの犠牲が現代の民主主義や人権に及ぼした影響について知ってほしい。
ー3・1節を迎えて、西大門刑務所歴史館が準備中の記念行事は。
今年で106周年を迎える3·1節を記念し、様々なイベントを用意した。殉国烈士に対する追慕式、3·1節当時の万歳行進の再現、独立宣言書の朗読、公演などだ。3月1日と2日は、入場無料。
写真は、西大門刑務所歴史館で行われた己未独立宣言書の朗読(左)と子供たちの合唱団=2024年3月1日、ソウル、西大門刑務所歴史館
ー独島や軍艦島を巡った歴史問題などについてどう考えるか。
歴史的事実を歪曲してはならない。必ずしっかりと正すべきである。韓国としては、独島問題について国際法的、歴史的根拠を持って論理的に対応すべきだ。感情的な対応よりは体系的な研究と広報が重要だろう。
2015年に日本政府が、軍艦島をユネスコ世界遺産として登載する際に、「軍艦島で起こった朝鮮人に対する強制労働の事実を知らせる」と約束したにもかかわらず、いまだに後続措置が履行されていない。これは、国際社会に対する信頼の問題である。韓国は、国際機関や多国間外交を通じて、歴史的事実を国際社会に発信するための努力を続けるべきだ。
このような歴史問題は、単に2国間問題だけではない。歴史を正そうとする努力は、人権や平和という普遍的価値を守るためのものである。国際学術研究、多言語広報資料の提供など、体系的な対応が必要だ。
ー韓国と日本は経済、軍事、外交における協力を強化している。歴史問題はどのように解いていくべきだと思うか。
韓国と日本の間で、歴史問題は依然として最も敏感な要素の一つである。協力が強化されたとしても、歴史問題が解決されない限り、いつでも葛藤が生じる恐れがある。実用的な協力を維持しつつ、歴史問題を解決するための努力が同時に行われなければならない。「協力は維持するが、歴史問題の解決に向けた努力を諦めない」という原則を守ることが重要だ。
ーコリアネットの読者に一言。
西大門刑務所歴史館は、韓国の独立運動の歴史を忘れずに、全世界に発信するための重要な場所である。海外からも多くの方々に訪れてほしい。独立運動家の精神を心から感じることができるように、引き続き強い関心を持っていただきたい。
jihlee08@korea.kr