「歩くこと」ほど、隅々まで見て感じることのできる旅行方法はないだろう。
交通手段を使えば何となく通り過ぎてしまいそうなことも、歩けば見逃すことはない。風に揺れるアシの音、足元で転がる小石とその音、森の道を歩いていると聞こえてくる落葉を踏む音、草木が漂わせる爽やかな空気と香り……。これらは、たとえ体がきつくても、歩かなければ味わえない趣だ。
オルレギル10コースの散策道では広大な海を一望できる
韓国で初めて歩く旅がブランド化されたのが済州島だ。曲がりくねった狭い道を意味する済州島の方言「オルレ」にちなんで名づけられたオルレギル観光コースは、2008年に導入され、現在21のコースが運営されるほどの人気だ。
11月末に訪れたオルレギル10コースは、晩秋にしか味わえない美しさで多くの人を魅了する。広大な海を一望でき、海風は冷たいというより、胸の中がスッとするようにすがすがしく感じられる。
済州オルレギルには目印として赤と青のリボンが掲げられている
済州オルレギルで見られるのどかな風景
和順里から摹瑟浦へ向かうオルレギル10コース(総延長15.5キロ)の難易度は「中」だ。海岸線を辿っていく道は、途中に急な登りの坂道があり、多くの人の息が荒くなるが、しっかり整備された木製デッキがあり、呼吸を整えることができる。海沿いを歩きながら陸地の方を見ると、遠くにオルレギルの頂上に向かって歩く人やのんびり草を食べる馬が目に入ってくる。
オルレギル10コースの後半にさしかかると、海の上に高くそびえる「鐘」の形をした山房山が見えてくる。山房山は、漢拏山で猟師が鹿を捕まえようとして玉皇上帝の尻を弓で撃ってしまい、怒った 玉皇上帝が漢拏山の峰をつかんで西方に放り投げ、それが海に浮かんでこうなったという興味深い伝説が伝えられている。済州島の人々は、山房山と白鹿潭の大きさがほぼ同じなので、山房山が掘られた部分が白鹿潭になったという言い伝えを信じている。山房山の他にも兄弟島、加波島、馬羅島があり、秘境を望むことがきでる。
済州オルレギル10コースの後半部から望む景色。山房山に雲がかかり、神秘的な雰囲気を漂わせている
済州オルレギルは、海岸線に沿って一周する21のコースで構成されている。オルレギルの平均距離は15~20キロで、所要時間は5~8時間だ。済州島の各地域の独特な地形と文化を秘めた内陸の散策道も少しずつ開発されている。中でも、14-1コースは、熱帯北方限界植物と寒帯南方限界植物が共存する特異な地形「コッチャワル」を観賞できるのが特徴だ。また、北西の海に浮かぶ楸子島に形成された18-1コースでは、島の中の小さな島から望む風景をカメラに収められる。
済州オルレギルは、島の隅々の趣を味わうには持ってこいの観光コースだ
オルレギルの詳細は、社団法人「済州オルレ」のホームページ (
http://www.jejuolle.org) をご覧ください。
記事:コリアネット イ・スンア記者
写真:コリアネット チョン・ハン記者
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