山からも野原からも春の気配が感じられる。寒い冬の間隠れていた芽が生え始め、あちこちで色とりどりの花が満開している。春を感じるのに最適の場所はなんと言っても山。遠くまで足を運ばなくても、都心には気軽に登れる小高い山が多い。そのうち、ソウルの漢江(ハンガン)の南にある冠岳山(クァナクサン)は、多くの登山客に親しまれている山だ。
標高632メートルの冠岳山は、冠をかぶっている姿に似ていることから冠岳山と呼ばれるようになった。岩山である冠岳山は、岸壁登りと軽い山歩きのうち一つを選択して楽しむことができる。
冠岳山登山路第1コースの入り口に建つ果川鄕校は、朝鮮時代の公立地方教育機関で、1690年に建てられ、1996年に復元された
冠岳山の登山路は、冠岳区(クァナクク)新林洞(シンリムドン)のソウル大学の入口から始まるコースと京畿道(キョンギド)果川(クァチョン)市庁の裏から登るコースなど複数ある。このうち果川市庁から始まるコースは、都心から近く、なだらかなコースとなっているため、多くの登山客に親しまれている。
暖かい春の日差しが降り注ぐ登山コース。平日だからか比較的閑散としている
今月24日、果川市庁の裏から登る登山道は、平日だったせいか閑散としていた。登山口には、朝鮮時代の地方教育機関だった果川鄕校が建っている。その隣にのびている道が第1コースで、ここから頂上の恋主台(ヨンジュデ)までは約3.2キロだ。第2コースは、果川総合政府庁舎の裏から始まる。
第1コースに沿って行くと、小川が流れる谷を見ることができるが、まだ春先だからか水の量はそれほど多くない。この道は登りやすく整備されていて、石段と木で作られた橋は、山登りをより楽にしてくれる。今年5月25日の「釈迦の誕生日」に向けて、行く先々に色とりどりの燃灯がかかっている。
登山路のあちこちできれいな水が流れる谷(上)と咲き始めた野生の花を見ることができる
登山客は、初めて会う人にも目を合わせて明るくあいさつする。果川に住む大学生のパン・スギョンさんとカン・ギョンムクさんは趣味で山に登っているが、冠岳山は初めてだと言う。カンさんは、「景色が綺麗で空気もいい。初心者でも登りやすい」と話した。パンさんは、「軽い運動にぴったりだ。水の流れる音がずっと聞こえてくるのでさわやかだ」と語った。
果川から冠岳山に登っていたソ・ジウンさんは、「時々冠岳山に登る。都心から近く、登りやすい」と話した。
日差しは暖かく、気温が徐々に上がっていく。背中と額に汗がにじみ始める。頂上に登る途中、湧水の水汲み場が2か所あり、水を持ってくるのを忘れた人でも、ここで喉の渇きを解消することができる。
果川市庁の裏側から登る登山路には水汲み場が2か所ある。水が冷たくてきれいで、飲むと気持ちいい
頂上の近くまで登ると、あちこちで奇岩壁を見ることができる。
谷のせせらぎと鳥のさえずりを聞いていると気分が爽快になる。高度が高く、まだ満開にはなっていないが、つぼみができた野生の花を見ることができる。
冠岳山は、天然記念物のホトトギスをはじめとする多くの動植物の生息地でもある。果川市によると、マヒワ、カケス、アカゲラなどがここに巣を作っており、リス、ハリネズミ、アナグマなども見かけられるという。ここで確認されている主な植物としては、マツ、クヌギ、モンゴリナラ、オーク、アカシアの木などがある。
半分くらい登ったところから、道が次第に狭くなり、傾斜が急になり始める。尾根には大きな岩と奇岩絶壁が現れ始める。
2時間くらい登ったら、恋主庵(ヨンジュアム)というお寺にたどり着いた。恋主庵は、冠岳山の頂上にある庵、恋主台に向かう道の途中にある。恋主庵では、たくさんの登山客が床に座って一休みしながら昼食やおやつを食べ、空腹を癒す。恋主庵からもう少し登っていくと気象観測台があるが、一部の時間帯に限って観覧可能となっている。
冠岳山の頂上付近に建つお寺、恋主庵
恋主庵から300メートルほど、急な階段を登るとたどり着く恋主台は、冠岳山の最高峰である恋主峰(629m)の崖の上に建っている
恋主台には、仏教信者の足が絶えない
恋主庵では、冠岳山の最高峰である恋主峰(629m)の崖の上に建つ庵、恋主台を見ることができる。恋主庵から300メートルほど急な石段を登るとたどり着く恋主台は、冠岳山登山の白眉といわれる。およそ3時間かけて頂上にたどり着いた仏教信者たちは、山歩きの疲れも忘れ、それぞれの願いを祈る。
恋主庵は、1411年に世宗大王(在位1418~1450)の兄、譲寧(ヤンニョン)大君(1394-1462)と孝寧(ヒョリョン)大君(1396-1486)が滞在し、当時、冠岳寺と呼ばれていたお寺を現在の位置に移した際に建てられた。元々、恋主庵は、677年に義湘大師(652~702)が創建したお寺で、義湘は、冠岳山恋主峰の崖の上に義湘台(ウィサンデ)(現在の恋主台がある場所)を建て、その下の谷に冠岳寺を建てた。
冠岳山の頂上、恋主峰にある「冠岳山」という文字が刻まれた石
冠岳山の頂上にたどり着いたらお腹が減ってきた。登りは3時間かかったが、下りは2時間足らずと、比較的早く降りることができる。舎堂(サダン)駅に向かう下り道もあるが、果川に向かうコースよりやや時間がかかる。舎堂駅に向かう登山道に沿って降りると、現在恋主庵がある場所に移る前の冠岳寺の跡を見ることができる。
冠岳山第1コースは、4号線果川政府総合庁舎駅で降り、10番・11番出口を利用すると簡単にアクセスできる。
現在の恋主庵がある場所に移る前の冠岳寺の跡
記事・写真:コリアネット イム・ジェオン記者
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