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2022.08.25

Hidden Charms of Korea_sool
マッコリは、濁酒の中でアルコール度数が最も低い酒だ。

マッコリは、濁酒の中でアルコール度数が最も低い酒だ。


[釜山=ミン・イェジ]
[写真=キム・シュンジュ]
[映像=イ・ジュンヨン]

釜山(プサン)の金井(クムジョン)山にある金井山城マッコリの醸造所。麹部屋の中をのぞいてみると、発酵中の数百個の麹が棚の上に置いてある。3坪あまりのこの部屋。24時間、室内温度48~50度が維持されるよう、練炭で温度を調節する。直径30センチほどのピザ生地のように見える麹をよく見てみると、色違いの麹菌が見える。金井山城マッコリを運営する劉清吉(ユ・チョンギル)代表は「専門用語で、黄麹、白麹、黒麹という」とし、「この3種類が全部入っているのが山城麹の特徴」と強調した。麹の種類が多いだけに、このマッコリから色んな味と香りがするという。

伝統の麹を使ってマッコリを造る醸造所の中で金井山城マッコリの醸造所は、韓国民俗酒第1号のマッコリを造るところであり、マッコリ分野で唯一の食品名人である劉氏が運営するところである。全国的な流通網が構築されているマッコリ醸造所のうち、伝統的な麹を使う唯一のところでもある。

日本による植民地時代を経て、日本の改良麹が韓国の伝統麹に代わって使われてきた。日本の麹は大量生産が可能で、酒造りにかかる時間を短縮できるというメリットがある。しかし、韓国伝統の麹に比べ、微生物の種類が限られ、酒の風味が単純になるというデメリットがある。

「山城麹」で有名なここは、足で踏んで麹の形を形成する。劉氏は「たくさん踏めば踏むほど、もちもちとした麹になる。また、麹菌をさらに増殖させ、デンプンの量を増やせる効果がある」とし、「麹にも、私たち先祖の知恵が盛り込まれている」と語った。麹は、外側の部分は厚く、真ん中の部分は薄くする理由があるという。外側が厚ければ水分を長く保つことができるため、麹の深いところまでまんべんなく麹の花が咲くようになるそうだ。

麹部屋の様子

麹部屋の様子


発酵が終わった麹は、殺菌のため太陽の光にあて、よく干す。完全に乾燥させた麹を細かく砕いた後、強飯、水と一緒に混ぜて1週間ほど発酵させると金井山城マッコリが完成する。

劉氏は、発酵が終わったマッコリをふるいにかけて試飲させてくれた。甘くて香ばしく、酸っぱい匂いがただよう。その匂いを嗅ぎつけたのか、ハチたちが劉氏の手の周りを飛んでいた。

劉氏にマッコリの魅力を聞くと「少しとろみがあり、濃厚な舌触りが感じられ、まろやかな味を持っている。また、お腹も少し満たしてくれる上に、いい気持ちになれる」とし、「マッコリには、韓国人の情緒が溶け込んでいる」と話した。

その上で「みんなで一緒に歌を歌い、チャング(韓国の伝統的な打楽器)も打ちながら、楽しく飲むのが一番」と付け加えた。 .

発酵が終わったマッコリをふるいに掛ける作業

発酵が終わったマッコリをふるいに掛ける作業


韓国の酒は大きく清酒、濁酒、焼酎(沸騰させて蒸留した酒)の3つに分けられる。マッコリは、濁酒のうち、アルコール度数が最も低い酒。長い歴史を持つマッコリ。三国時代(高句麗・新羅・百済)の様々な文献には、マッコリの造り方に関する記録が記されている。

祖先にとってマッコリは、汗をかきながら働いた後に飲む、渇きをいやしてくれる飲み物であり、また空腹を満たしてくれる食糧だった。劉氏は「農作業中、腹が減ってきたら、田畑で一杯飲んで、空腹をしのいだ酒」と定義した。韓国の有名な詩人の千祥炳(チョン・サンビョン)氏は、マッコリのことをご飯に例えた。

マッコリが空腹をしのぐご飯のような酒として認識されたのは、作り方と関係がある。昔は、伝統の麹に水と穀物を入れて発酵させた穀酒から、澄んだ清酒を汲み出した後、その沈んだ酒粕に水を混ぜてこす方法でマッコリを造った。酒粕が満腹感を与えてくれるのだ。

最近は、マッコリの作り方が根本的に変わった。清酒を造って残った副産物を活用するのではなく、マッコリそのものをおいしくするための造り方を採択している。韓国伝統酒の根本とも言える伝統麹を使い、人工甘味料を入れずに、濁酒の五味(甘味・酸味・苦味・渋味・辛味)を再現した「プレミアム・マッコリ」を生産するメーカーも登場した。一時、ビールや焼酎、ワインなどに押されていたマッコリが最近、復興期を迎えている理由でもある。

マッコリは、内需と輸出の両方とも堅調な成長が続いている。韓国農水産食品流通公社によると、2020年の酒類市場の規模は1.6%縮小したが、マッコリ市場の規模は52.1%拡大した。韓国内のマッコリ小売り市場の規模は、2016年の3000億ウォン台から、去年には5000億ウォン台にまで大きくなった。

輸出も継続的に増加し、去年におけるマッコリの輸出額は1570万2千ドルで、前年比27.7%増加した。今年1~3月期の輸出額は424万8千ドルで、前年同期比11%増となった。主な輸出先は、日本(約719万ドル)、米国(約290万ドル)、中国(約153万ドル)など。

メーカー別でみると、「麹醇堂(クッスンダン)」の年間輸出額が100万ドルを突破した。「裵商冕(ペサンミョン)酒家」の場合、去年の輸出額は前年比274%急増した。「ソウル長寿」は、ベトナム・オーストラリア・カンボジア・米国・日本などへと輸出を拡大し、現在27カ国・地域に輸出している。韓国農水産食品流通公社が発表した「2021酒類市場トレンド報告書」によると、マッコリ輸出の増加要因について「韓国ドラマや映画を通じて、韓国食文化への関心が高まったため」と分析している。


jesimin@korea.kr

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