食・旅行

2023.10.02


[ソウル=オ・グムファ、ホン・アンジ]
[映像=ホン・アンジ]

夏の暑さが和らぎ、涼しい風が吹く季節。韓国を代表する観光地である景福宮(キョンボックン)も秋を迎え、夜間観覧ができる特別プログラム「星明かり夜行」が実施される。

先月14日、コリアネットは景福宮の夜を楽しめる「星明かり夜行」に行ってきた。

9月8日から10月8日まで行われる「星明かり夜行」は、景福宮の夜間観覧が実施されている期間に行われる特別プログラムで、毎年2回開かれる。秋の夜、月明かりの下で宮廷料理を味わい、伝統音楽の公演を楽しみながら宮殿内の隠れた名所を見学できる。一般の夜間観覧では見られない特別コースと体験が加わり、ユニークな景福宮の夜を満喫できる。プログラムが行われるのは1日2回だ。

110分間行われる「星明かり夜行」は、景福宮で一番規模が大きい厨房である外燒廚房からスタートする。王に招待されて景福宮を訪れる貴重なお客様のための特別なごちそうである「ドスク水刺床(スラサン)」が準備されていた。

景福宮の「星明かり夜行」で体験できる宮廷料理「ドスク水刺床」=9月14日、ソウル・鐘路区、ホン·アンジ

景福宮の「星明かり夜行」で体験できる宮廷料理「ドスク水刺床」=9月14日、ソウル・鐘路区、ホン·アンジ


「ドスク」は、弁当をあらわす昔の言葉で、「ご飯を盛った小さな器」という意味だ。朝鮮の王が日常的に食していた12種類のおかずを現代的にアレンジしたサンチャリム(お膳)が出され、まるで王になったかのような気分になった。青い風呂敷に包まれた4段の真鍮(しんちゅう)の器には、「紅参カルビチム」、「サスルジョク(牛肉とヒラメを卵に乗せたチヂミ)」、「トドックイ(ツルニンジン焼き)」、「コルドンゲン(牛肉でダシをとったスープ)」などの伝統料理がおいしそうに盛られている。食事の間は、カヤグムの公演が行われた。

夜のとばりがおり、辺りが暗闇に包まれるころ、本格的に宮殿探訪が始まる。韓国の伝統的なデザインで作られた青沙提灯(チョンサチョロン)というちょうちんを手に、尚宮媽媽(サングンママ)に案内される。韓紙からもれる、柔らかでほのかな光が道を照らす。

まずは、王の母親のための空間である慈慶殿(チャギョンジョン)に向かう。そこで、一番目を引いたのは、裏庭にある十長生の煙突である。煙突には、韓国の伝統模様である十長生が刻まれており、「万寿無窮(いつまでも長生きする)」を願うという意味が込められている。

続いて王の水刺床(スラサン)を担当する醬庫(ジャンゴ)に到着した。「スラサン」とは、王と王妃のお膳を指す言葉である。醬庫(ジャンゴ)とは、宮殿で使われるすべての醤油や塩を保管しておく場所で、普段は一般の観覧客には開放していない。醬庫の中では、醬庫媽媽(ジャンゴママ)とナイン(正式に宮廷で働く者)がく繰り広げる、漫談を中心とした演劇が行われた。

醬庫の内部の様子=9月14日、ソウル・鐘路区、オ・グムファ

醬庫の内部の様子=9月14日、ソウル・鐘路区、オ・グムファ


醬庫での観覧を終えた後、「王の書斎」と呼ばれる集玉斎(チプオクジェ)と八隅亭(パルウジョン)を見学した。中国とロシアの建築様式を活用して、異国的な要素を盛り込んだこの場所は、特別に内部の観覧も可能だ。王のいすである龍交椅(ヨンギョイ)に座ってみたり、大韓帝国の国璽を押してみるなど特別な体験が用意されていた。

乾清宮(コンチョングン)を見学した後は、「星明かり夜行」の最後のコースであり、ハイライトの香遠亭(ヒャンウォンジョン)に向かった。華やかな照明でライトアップされた美しい香遠亭を眺めながら、みんな嘆声を漏らし感動している様子だった。香遠亭をつなぐ醉香橋(チィヒャンギョ)では、第26代王である「高宗(コジョン、在位1863~1907)」 を題材にした公演が行われた。ドアが開くと、観覧客は順番に橋を渡り、王との記念撮影を行った。

「星明かり夜行」プログラムが好評を得たため、今年下半期から、初めて前売り券の抽選制を導入した。今月8日からは外国人を対象に、英語の解説を行う「星明かり夜行」が予定されている。

「星明かり夜行」プログラムを担当した韓国文化財財団・活用企画チームのキム・ドソン副チーム長は、「人気の高いプログラムであるだけに、今年は香遠亭を照らす照明のデザインと高宗の決意表現した舞台などを新しく企画した」とし、「景福宮の『星明かり夜行』プログラムの抽選に当たった幸運な参加者の方々が、たくさんの思い出を作れますように」と話した。

香遠亭の全景=9月14日、ソウル・鐘路区、オ・グムファ

香遠亭の全景=9月14日、ソウル・鐘路区、オ・グムファ