名誉記者団

2021.06.22

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후쿠시마 오염수

福島第一原発の汚染水の海洋放出を反対する日本市民ら=4月13日、東京、聯合ニュース


[東京=吉岡香織(日本)]

2021年4月13日、日本政府が「廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚会議」において、福島第一原発(以下、1F)にあるALPS処理水(汚染水)を海洋放出する基本方針を決定しました。これについて、KOREA.netで川井康郎さん(プラント技術者の会・原子力市民委員会規制部会)のコラムをQ&A形式で紹介しています。「汚染水」と「処理水」はどう違うか、放射性物質は取り除けるのか、貯められている汚染水の量と含まれるトリチウムの総量やそれ以外の放射性核種、人体への懸念される影響、放出以外の代替案などを説明しています。

「汚染水」と「処理水」の相違点を考える上で、混乱を生じやすい点について、記事でも最初に取り上げられていました。

日本政府は「ALPS処理水」という言葉を用いています。川井さんによれば、「処理水」とは、「多核種除去装置(通称ALPSと呼ぶ)で処理した後の水」のことです。しかし実際には、「トリチウム」が除去されていないことはもちろん、「処理水」が貯められているタンク群のうち、「70%以上がその基準値を超える諸核種(ヨウ素129、ルテニウム106、ストロンチウム90など)が残っている『放射能汚染水』」だと指摘しています。


日本政府は「汚染水」を「処理水」と呼んでいるのです。日本政府はトリチウム以外の放射性物質を基準値以下に取り除いた「処理水」を海洋放出すると決めましたが、実際には、福島第一原発に貯められている水は、トリチウム以外の放射性核種も基準値以上含まれている「汚染水」が約70%、「処理水」が約30%の量なのです(5月20日時点)。しかし、「処理水」と呼ぶことで、現時点で基準値以下のものがたくさんあるかのように印象付けられてしまうので、良くないことだと思います。

海洋放出に反対している民間団体によれば、「汚染水」と書いている報道に対して日本政府は「処理水」へと訂正を求めてくるようです。そのため、日本のメディアによって「処理済み汚染水」「汚染処理水」など少しずつ異なった書き方がされますが、「汚染水」と「処理水」の違いが分かっていると混乱しなくてすみますね。

韓国のメディアでもたくさん報じられていますが「汚染水」が用いられているので、日本の方が分かりにくくなっていると感じます。


日本政府は、海洋放出を決定した4月13日に、「ALPS処理水」の定義を変更し、「トリチウム以外の放射性核種について、環境放出の際に規制基準を満たす水」のみ「ALPS処理水」と呼称するとしました。

しかし、他の放射性核種が基準値以下に取り除かれたとしても、それで問題がなくなるわけではありません。トリチウムがまだ残っている以上、それは「汚染水」に他ならないのです。

日本政府が宣伝している内容とは程遠いです。なぜ、日本政府は汚染水の海洋放出を強行しようとするのでしょうか。トリチウム以外の放射性核種が、タンクに貯まっている汚染水の70%以上で基準値を超えて含まれています。日本政府は薄めて放出するので問題ないと言っていますが、福島原発事故前に1Fから放出されていた年間のトリチウム量に換算すると400年分を超える量です。


キャラクター化されたトリチウム=復興庁

キャラクター化されたトリチウム=復興庁


日本政府はトリチウムのキャラクターを作って、飲んでも大丈夫だと宣伝して、国会でも「トリチウム水は飲める」という見解を示しています。

川井さんは、体内の有機物に取り込まれ有機結合性トリチウムとなったときに生じる、放射線による近傍の細胞への攻撃や、DNAを構成する水素とトリチウムが置き換わったときに起きるDNA損傷、カナダの重水炉で指摘されたトリチウムの有害性の報告など、人体への影響や毒性についても例をあげています。

強行について疑問に思うさらなる理由は、社会的な合意形成ができていないと感じたからです。


環境問題に関心があり、海の幸たっぷりのお寿司が大好きで、福島原発事故や海洋放出は以前から私にとって重要な問題です。

報道によれば、全国漁業協同組合連合会の会長が菅義偉首相と官邸で面会し「絶対反対」との姿勢を崩さず、昨年行われた意見募集手続(パブリック・コメント)は4,000通を上回りましたが、多数寄せられた市民の懸念は議論されていないようです。また、原子力市民委員会や原子力資料情報室など民間の調査研究団体は、以前から声明を発表するなど問題を提起してきました。

川井さんは2つの代替案を提言しています。1つは、石油備蓄に用いられている堅牢な大型タンクに長期保管する方法で、放射性物質には半減期があるため、120年後にはトリチウムの量は1/1,000に減衰するというもの。もう1つは、米国サバンナリバー核施設ですでに実施されている、セメントや砂とともにコンクリートに流し込んでモルタル固化することで、海洋汚染リスクを半永久的に遮断でき、既存の土木技術で容易に施工可能だという方法です。

しかし、これらも議論されることはなく、日本政府はタンクの増設によって起きる敷地不足などを理由に挙げ、また、最も安上がりだということで海洋放出を決めたというのです(しかし、海洋放出によって風評被害が生じた場合の対応や補償にかかる費用などは含まれていない)。なにより、漁業関係者、農業関係者、観光業界など福島県やその周辺の、風評被害の影響を懸念する方々の声には耳を傾けなければいけないと思います。

記事の結びは、日韓両国民が共に歩むべき方向についてでした。これも社会的合意の形成に含まれますが、この海洋放出については、近隣諸国への相談なく一方的に決まりました。「海洋放出が実施された場合、日本の国際的信用も大きく損なわれます。国際海洋法上の義務をないがしろにするものです。世界中で人間の行為による地球環境への脅威が叫ばれている中、日本政府による放射能汚染水の意図的な海洋投棄は決して許されるものではありません」という指摘はごもっともです。

また、地理的に最も近い韓国はもちろんのこと、各国から批判、懸念、反対の声が上がるのは当然のことですが、「日本国内では月城原発からの放出トリチウム量の多さなどを例にあげながら、嫌韓意識を煽ることに政治利用されているという実態」があることにも触れ、「両国が抱えている様々な問題の解決をますます難しくしてしまう一因となることに大きな危惧を感じます」と、お互いの冷静さと努力の必要性を述べています。放射能に国境はありません。


2月9日に開催された日韓共同討論会キャプチャ

2月9日に開催された日韓共同討論会キャプチャ


日韓の市民らが力を合わせた前向きな動きがあります。韓国側からの呼びかけで、1月に汚染水海洋放出に反対するインターネット共同行動が行われ、日韓で150名が参加しました。2月に行われた日韓共同討論会には約200名が参加し、10カ国語に翻訳された「福島原発事故10年、汚染水を海に流さないで! 原発もうやめよう!」という国際署名がスタートしました。この署名は、海洋放出が決定される前日の4月12日に、64,431筆(88カ国)が日本政府に提出されました。署名は、約76,900筆(6月15日時点)が集まっています。

福島原発事故から10年が経ちました。でも、いまだにこのような問題を抱えていることを考えると、私たちは1日も早く、原発にたよらず再生可能エネルギーを上手に使った社会の実現を目指していかねばならないなと思いました。  


*この記事は、日本のコリアネット名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。

eykim86@korea.kr