社会

2021.06.04

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東京電力福島第一原発の様子=1月、日本・福島、聯合ニュース


2021年4月13日、日本政府は関係閣僚会議において福島第一原発(以下1F)の敷地内タンクに保管されているALPS処理汚染水の海洋放出処分を決定した。漁業関係者をはじめとする地域の人々、多くの市民、国際社会の反対や懸念を押し切っての強行だ。Korea.netは、プラント技術者の会・原子力市民委員会規制部会の川井康郎さんのコラムをQ&A形式で紹介する。

1.日本政府は、福島「汚染水」を「処理水」と呼んでいます。


日本政府が言う「処理水」は、多核種除去設備(通称ALPSと呼ぶ)で処理した後の水です。2011年3月11日の福島原発事故の際に3基の原子炉で炉心溶融(メルトダウン)が起こりました。その後、溶け落ちた燃料(デブリ)を継続的に冷却するための水と、建屋地下ピットに流れ込む地下水が混ざり合って発生したのが高濃度の「汚染水」です。セシウム等を除去した後、一部はデブリ冷却水として循環使用され、残りがALPSを通してタンク群に貯められています。

2.ALPSは、すべての放射性物質を取り除くことができますか。


「トリチウム」は除去されません。「トリチウム」以外の放射性核種は基準値(告示濃度比総和が1以下)以内に除去されるという触れ込みでした。実際には70%以上がその基準値を超える諸核種(ヨウ素129、ルテニウム106、ストロンチウム90など)が残っている「放射能汚染水」です。

3.日本政府は、いつ汚染水を海洋放出しますか。


汚染水は2021年4月15日現在で約126万トンに達し、含まれているトリチウムの総量は860兆ベクレルを超え、平均濃度は約70万ベクレル/Lになります。日本政府の排出計画案によれば、年間排出量は事故以前の1Fからの排出管理目標値である22兆ベクレル以下、濃度は現在、汲み上げ水の放出などで運用されている1,500ベクレル/L以下に希釈し、30年以上をかけて放出しようというものです。汚染水の量は今後も増加するので実際の放出期間はもっと長くかかります。
なお、事故前に1Fから海洋放出されていたトリチウム量は年間約2兆ベクレルでした。400年分を超えるトリチウム量を短期間に放出しようとするものです。

4.海洋放出で何が起きますか。人体にどういった影響を与えますか。


トリチウムの人体への影響については、海洋環境を経由して体内に取り込まれた有機トリチウムからの放射線が近傍の細胞を攻撃する、水素として組み込まれたトリチウムがヘリウムに壊変することでDNAが破損するといったリスクが挙げられています。カナダの重水炉はトリチウム排出量が多く、放出下流域での白血病や流死産、ダウン症候群、新生児の心臓疾患などの異常な増加などが報告されています。

5.海洋放出以外の代案もあるようですが。


汚染水が2022年秋には最大可能貯留量137万トンに達するとの試算を発表して海洋放出を急ごうとしています。しかしながら、実際には、海洋放出に代わる2つの代替案があります。


1つ目は、石油備蓄などで多くの実績を有する堅牢な大型タンクに汚染水を長期保管し、半減期12.3年のトリチウムの減衰を待ちます。120年間保管すれば、トリチウム量は約1/1000になります。


2つ目は、汚染水をセメント、砂とともに、予め設置したコンクリートタンクの中に流し込んでモルタル固化するというものです。廃止措置に入っている米国サバンナリバー核施設において実施されています。海洋汚染リスクを半永久的に遮断でき、既存の土木技術で容易に施工が可能です。固化後もトリチウムの減衰が進み、年月による劣化に対してもリスクはほとんどありません。弱点はセメントや砂と混ぜるため容積効率が低いことで、水での保管と比べると約4倍の容積を必要としますが、東電敷地北側の空き地や周辺の除染廃棄物貯蔵所の活用が可能です。しかし、日本政府は、最も安上がりな海洋放出する方針を決めました。

6.日韓両国民が共に歩むべき方向について。


汚染水の海洋放出は、近隣諸国による懸念や反対の声を無視して強行されようとしています。海洋放出が実施された場合、日本の国際的信用も大きく損なわれます。国際海洋法上の義務をないがしろにするものです。世界中で人間の行為による地球環境への脅威が叫ばれている中、日本政府による放射能汚染水の意図的な海洋投棄は決して許されるものではありません。

ところで、この汚染水の海洋投棄計画については地理的に最も近い韓国内から批判の声が上がるのはもっともなことです。残念なことにこうした動きが逆に日本国内では月城原発からの放出トリチウム量の多さなどを例にあげながら、嫌韓意識を煽ることに政治利用されているという実態があります。お互いの国内で、この汚染水問題を感情的に取り扱うことは、両国が抱えている様々な問題の解決をますます難しくしてしまう一因となることに大きな危惧を感じます。日韓両国民「お互いの」冷静さと努力が求められるものと思います。

今回の汚染水問題を通じて、日本政府や国際世論に対して、政治的意図を排した冷静で客観的な声を届けることで放出計画の撤回を実現することこそが私たちの役割だと思います。同時に、この運動を通じて、日韓両国民共通の願いである、一日も早い脱原発社会の到来をぜひ実現していきましょう。

編集 キム・ウニョン
eykim86@korea.kr