名誉記者団

2021.07.22

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[茨城=登久美子(日本)]
[写真=CJ ENM]


これはもはやただのSF映画ではありません。韓国が生み出した新たなジャンルとして「K-SF映画」というジャンルを設けても良いのではないでしょうか。


7月16日(金)、韓国で初日興行成績ナンバーワンを達成した大ヒット映画、ソボクが遂に日本で全国公開されました。タイトルのソボクは永遠の命をもつクローンの名前、そのソボクをめぐって繰り広げられる生と死の意味、そして攻防。筆者は公開初日に観てきましたが、平日の昼間にもかかわらず席はほとんど埋まっていて大盛況でした。


ソボクは今年4月に韓国で公開して大ヒットを記録。コロナ禍にも関わらず一日で4万5127人が観覧ました。監督は建築学概論が代表作のイ・ヨンジュ監督。主役は「トッケビ」や「新感染ファイナル・エクスプレス」のコン・ユと「雲が描いた月明かり」や「青春の記録」のパク・ボゴム。どちらもドラマや映画で大人気です。その2大スターの共演が話題にもなったソボク、心に響くとても良い映画だったので、ストーリーを始め特殊効果のVFXや台詞の中に見え隠れする哲学的な問いかけなど、筆者が感じたオススメポイントをご紹介しようと思います。



それではまずストーリーから。舞台は韓国国内にある研究所。余命宣告を受けて死を目前にしていた元情報局エージェント・ギホン(コン・ユ)に、国家の極秘プロジェクトによって誕生した人類初のクローン・ソボク(パク・ボゴム)を護衛する任務が舞い込みます。しかし任務を請け負った早々に襲撃を受け、その場は逃げ切るもギホンとソボクは二人だけに。お互いに心を通わせていきますが、永遠の命を持つソボクを狙う魔の手はとどまることを知らず、追い詰められていきます。


見どころは盛りだくさん。まず全編を通して感じていただきたいのが「緊張感」です。生きるとは何か、死ぬことは生きるための必要悪なのか、それともただの悪なのか。はたまた、生は勝利で死は敗北なのか。銃口を突きつけられているような、というと大げさかもしれませんが、ソボクが発する生に対する台詞一つ一つがとても重みがあり、自分はどうなんだと問われたようでした。



また、逃げる途中で立ち寄ったビリヤード場のシーンがあります。誰もいないビリヤード場で二人はカップ麺をすするのですが、ソボクは箸を使ったことがなく、しかも食事を始め全てにおいて管理された毎日でカップ麺を食べたことがない。当然、最初は警戒するのですが、伸びきった具のないカップ麺でも食べてみると美味しくて3個も平らげてしまいます。結果二人の距離は一気に縮まることに。このカップ麺によって心理的な距離を縮めるというのは、ラーメン大国の韓国らしさが詰まっていて、私の好きなシーンの一つです。


そしてVFXも圧巻です。ソボクは無限の可能性を持つ存在で、重力と圧力をコントロールできます。その重力と圧力をコントロールするシーンが出てくるのですが、これがまた凄い。コントロールが始まった瞬間に地面が震動し、地面の小石や砂がバウンドします。このバウンド、コンピューターの画像処理が生み出したものではなくて、撮影チームが作った振動器の上にカメラを設置し、リアリティを持たせたそうです。このこだわりは圧巻の一言。ソボクが持つ特別な能力の方向性とアルゴリズムを作り、空間と物の変化や破損する過程を何段階にも分けて作ったのだとか。



SNSでもソボクはかなり高評価です。韓国や日本どちらとも多いコメントとしては、やはり「泣ける」というもの。そして全出演者の演技が上手くて映画に没入できたというものも。ソボクが受け入れている運命、そしてそれをわかっていて自らの解釈をそれぞれ加える大人達。筆者もラストは涙が止まりませんでした。もしかしたらソボクの第2号、3号と立て続けに作ることはできるのかもしれないけど、不死身のクローンが増えるたびに生きることの意味、死ぬことの意味はより大きく立ちはだかる難問となっていくのかなと思いました。



永遠の生かそれとも死か、というテーマのストーリーは沢山あります。しかし今までのストーリーと違うところは、登場人物が良い意味で泥くさくて人間味がある、というところです。ギホンも、アン部長(チョ・ウジン)も、イム・セウン(チャン・ヨンナム)も、みんな人間味があります。先ほど述べたように大きなテーマから来る緊張感があるのですが、その緊張感はこの人間味によって最後まで保たれるのかもしれません。


ソボク、新たなK-SF映画の幕開けとして、何度でも観たくなる映画でした。


*この記事は、日本のコリアネット名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。

eykim86@korea.kr