名誉記者団

2024.11.11

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【文・写真=田尾秀子】

2003年の韓流ブーム以来、私たちは韓国ドラマなどのエンターテイメント以外にも様々な文化や、韓国の人々の日常にまで関心を持つようになりました。その中の一つとして料理に興味を持つ人も次第に増え、現在では日本中のどこへ行っても必ず韓国料理店があると言っても過言ではないくらいになってきました。

しかしながら韓国家庭料理や宮中料理を知る人は多いものの、韓国の寺刹(サチャル)料理を知る人、食べたことある人はほんの一握りではないでしょうか。実は私もその中の一人でした。韓国寺刹料理とはどのような料理なのか、作り方から体験しました。

新築移転された建物は凄く綺麗でした

新築移転された建物は凄く綺麗でした


私は、新築移転(9月末)された駐大阪韓国文化院において韓国仏教文化事業団との共同開催の「韓国仏教文化体験ウィーク」のイベントの一つ「韓国寺刹料理体験教室」に参加しました。

寺刹(サチャル)料理とは?

一言でいうならば、精進料理を意味します。韓半島で仏教を国家理念としていた時代(高句麗、百済、新羅)には、仏教の精神や価値観が食生活にも反映され、独特な食文化が生まれました。牛乳以外の肉類や海鮮などを一切使用しない野菜中心の料理です。

その理由は慈悲思想に基づいてのことです。

また、韓国のサチャル料理ならではの、使用してはいけない五辛菜(オシンチェ)があります。

五辛菜とは?使用しない理由

五辛菜とは、ニンニク、ニラ、ネギ、ノビル、ホンゴを指します。

これらの刺激的な野菜は修行の妨げになるとされ、使用しません。

韓国寺刹料理教室体験について

最後に如居スニムと記念撮影


韓国から来日された如居(ヨゴ)スニムに教えていただきました。

如居スニムのお話によると、高句麗の時代には仏教は盛んで、食べ物や文化が豊かであったが、朝鮮時代になり抑制政策のため、スニムたちは徐々に山奥に入ることになり、約500年間に渡り生活が苦しかったそうです。

それで、あるスニムの教えである、空腹時には山の木の実や草の根などを食べ、のどが渇けば川の水を飲むという精神をいまだに持ちながら、スニムたちは修行されてるそうです。

今回、如居スニムが寺刹料理教室をする意味は、もう一度食べ物の文化を学んでいただきたくて来られたそうです。

お話では、食材はすべて栽培するところから揃え、その野菜を使ってキムチや味噌、醬油、コチュジャンなどの醤類、漬物や酵素も作られるそうです。

また、全ての材料には六味(苦味、酸味、甘味、辛味、塩味、さっぱりした味)があり、それらを活かして調理します。

寺刹料理に使用するものは、野菜以外では昆布やキノコ、エゴマ、生豆粉などの人工の物が入らない天然調味料のみを使用し、ごま油はごま油を作っている店に出向き、ごま油が絞り終えられるまで、他の油を混ぜられないようにずっと見守っているそうです。つまり、すべての物が無添加で国内産ということです。

そして、そのようなことがすべて修行になるのだそうです。

料理教室体験メニュー

秋の食材がふんだんに入ったヨンヤンパプを炊く前の様子

秋の食材がふんだんに入ったヨンヤンパプを炊く前の様子


① 秋の風味漂うヨンヤンパプ(炊き込みご飯)

米と栗、さつまいも、椎茸、エリンギ、なつめを炊き込んだご飯です。このご飯は日本の炊き込みご飯のように炊くときに味付けするのではなく、食べるときにタレをかけます。タレはみじん切りにした青唐辛子、醤油、ごま油、ごまを混ぜたものです。


食材がふんだんに入った炊き込みご飯は、何も味付けをしていなくても食材のそれぞれの旨味が混ざり合ってほんのり甘く、心まで満たされるような温かい気分になりました。そしてタレをかけて食べると、また違う味わいになり美味しかったです。

② カクテキ(大根キムチ)

カクテキと言っても、五辛菜であるネギ、ニラ、ニンニク、塩辛はもちろん使用せず、大根、生姜、粉唐辛子、塩、醤油、梅エキス、のり(水と小麦粉を糊状にしたもの)を使用して作ります。


食べた感想は、作りたての時は未発酵で酸味は感じられないものの、大根が持つピリッとした味わいと唐辛子の辛さが混ざり合って、サラダを食べるような爽やかな味わいでした。

そして直射日光を避けた場所に常温で数日置いておくと発酵し、酸味が加わることにより旨味が増して更に美味しくなりました。

特に脂っこい料理の時に食べると、口の中がさっぱりしました。

今回作ったカクテキを食べてみて、キムチにはニンニクが入っているのが当然で、入っていないと美味しくないという私の固定観念はみごとに覆されると同時に、ニンニクが入っていないことで臭いを気することなく、いつでも食べられるのを嬉しく思いました。

その他、今回のイベントで頂いた冊子を読むと今まで知らなかった言葉や、それについての意味が書かれていました。(以下、冊子より一部引用)

① 鉢盂供養とは?

丁寧にこしらえた食べ物を釈尊に供え、大衆と共に分けて食べながら料理が完成するまでの間苦労した多くの人々の真心に感謝し、食べ物を絶対に残さないよう適切な量だけ食べるという精進料理文化の精神を含んだ修行者の食事法のことです。

② 全体食とは?

食材を何一つ捨てることなくすべてを食べることを言います。具体的に例をあげると、お米を精米するときは籾を搗きすぎないようにして栄養素の損失を防いだり、果物の皮はできるだけ皮ごと食べます。捨てられることの多い大根の葉っぱでも、丁寧に掃除して乾燥させて様々な料理に使用します。

また、必要なものを使った後の当然捨てるであろうと思うようなものでも最後まで最善を尽くして使い道を探します。そうすることにより食べ物を無駄にすることがなく、いろんなな栄養素を摂取することができます。このように料理が完成するまで、すべての存在の大切さや因縁を悟ることで様々なことへの感謝の気持ちが生まれます。

韓国寺刹料理教室に参加して、お料理を教えてくださったスニムやスタッフの方々に対してはもちろんのこと、そして料理には重要な食材に対してまでも感謝の気持ちを持てたことが、私にとって一番の学びになったように思いました。

フードロスが社会的な問題になっている現代、「全体食」とまではいかなくても、せめてそれに近いことから一人一人が心掛ける必要があるのではないかと改めて実感しました。

また是非、韓国での寺刹料理教室体験や、お寺で静かに過ごすことが出来るテンプルステイにも参加してみたいです。

作ったお料理を持ち帰って撮影してから美味しくいただきました

作ったお料理を持ち帰って撮影してから美味しくいただきました


韓国仏教文化事業団
<韓国寺刹料理文化体験館>
ソウル市鍾路区栗谷路39 安国ビル新館2階
毎週月曜日休館
詳細はこちらから https://www.koreatemplefood.com

*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。

hjkoh@korea.kr