南基正
ソウル大学日本研究所副教授
日本政府は28日午前0時から、韓国を輸出管理の優遇対象国(ホワイト国)から外す政令を施行した。日本政府は安全保障問題を挙げ、貿易管理体制を再検討すると説明している。だが、日本による植民地時代の強制徴用問題に対する2018年の韓国大法院(最高裁)判決がその原因だろう。日本政府は、韓国の大法院判決が1965年の韓日請求権協定2条に違反していることを挙げ、韓国政府の対応を求めた。また、同協定3条により外交協議と仲裁を求めた。韓国政府は、司法府の判断を尊重する立場だ。現在、日本企業の資産を差し押さえ、現金化する手続きが進んでいる。
韓国がホワイト国から除外されると食料や木材などを除き、軍事転用の恐れがある物品について、輸出契約ごとに許可が必要になる。許可の審査には90日ほどかかる。日本企業の資産を差し押さえるまでにかかる期間もほぼ同じだ。日本政府の狙いは明白である。日本政府による対韓輸出規制強化措置は、WTOのルール違反に該当する可能性がある。日本政府は、同措置と政治が無関係だという立場を示している。とはいえ、大法院判決の無力化を待っているのだ。
日本政府は、大法院判決に対して「国際法に違反している」と主張している。韓日請求権協定に基づき、日本は計5億ドル(無償3億ドル、有償2億ドル)を韓国に供与し、経済協力を約束する(第1条)。また、請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決」されており、いかなる主張もすることはできない(第2条)ことを定めている。日本政府は、大法院判決に対して国際法を違反(第2条)していると指摘し、韓国政府に早急に是正するよう求めている。
しかし、日本政府の主張は妥当ではない。第1に、大法院判決は強制徴用に対する賠償を日本企業に命じた。賠償請求権は同協定の対象にならない。請求権協定は、財政や民事上の権利と義務関係を政治的に解決したもので、植民地支配に直結した不法行為による基本的人権侵害に対する賠償問題とは何の関係もない。日本政府による談話にも韓国に約束したのは経済協力という目的であって、その法的な性格については言及されていない。また、経済協力を約束したことと請求権問題が解決済みということが関係があるかについてもいまいちだ。大法院は既にこの問題を指摘している。
第2に、大法院判決が同協定の第2条に違反しているならば、賠償問題も解決済みというカテゴリーに含まれるかも確認すべきだ。賠償問題が解決済みだとすれば、賠償の前提となる植民地支配の不法性を認めたのかについても確認すべきだ。日本が韓国に資金を供与したことで、請求権問題が解決済みだと主張するならば、同協定の第1条と第2条は「法律的相関関係」ではないという従来の立場を変更しているかと疑問に思う。
第3に、成文法として条約をどのように捉えるかだ。韓日両国による1965年に締結した基本条約と請求権協定に対する解釈が異なる。韓国は基本条約に基づき、日本による植民地支配が不法だという立場だ。だが、日本は否定し続けている。また、韓国は同協定の第1条と第2条が不可分の関係にあると見ているが、日本は無関係だという立場だ。
日本政府は、韓国政府が主張していることを大法院が一方的に従うと見ている。韓国が百歩譲って、これを受け入れるとしても、「意見の不一致を認める(agree to disagree)」ことになる。日本政府が「国際法違反」を取り上げ、韓国政府を非難するなら、「意見の不一致を認める」ことを否定することになる。日本政府こそ、「慣習法としての国際法」に違反しているのだ。
一般人には難しい法律に関する問題だが、ここで確認できることは一つだ。1965年の体制の基礎となる韓日基本条約と請求権協定に対する、両国間の解釈の不一致が現在の問題を起こした原因となることだ。
悪化している韓日問題を解決する方法の一つとして、条約と協定に対する韓日両国の解釈を一致すべきだ。1965年の体制における不安定性を取り除くことが重要だ。植民地支配による不法性を確認する韓国の要求に日本は応じなかった。だが、日本は1990年代に入って、韓国が主張している認識に近づいている。河野談話(1993年)、村山談話(1995年)、 金大中・小渕恵三による韓日共同宣言(1998年)で、確認されている。2010年の談話では、植民地支配は韓国人の意思に反したものだと認めた。これを基に韓日共同文書に記載しなければならない。
現在、韓日関係が悪化していることは、1965年に封印されていた韓日における本質的な問題が大法院判決によってさらけ出されたと言える。韓日関係の行方は、この問題をどのように解決するかによって分かるだろう。歴史と法理を基づいた韓日両国の真摯な対応が求められるだろう。