
1970~80年代の韓国漫画の看板スター「トッコタク」の生みの親、故イ・サンム画伯
誰にでも思い出の漫画やアニメがある。幼い頃に主題歌を口ずさみながら欠かさずに見たアニメ、友達と一緒に読みながら共感を分かち合った漫画は、思い出が詰まったその時代の象徴でもある。
韓国で1970~80年代を暮らした「ベビーブーム」世代なら、今年の1月に世を去ったイ・サンム画伯(1946~2016)の「トッコタク」を誰もが覚えているはず。それまでは漫画の主人公といえば善良で平面的なキャラクターだったが、その中で1人飛び出ていた自由奔放な性格の少年トッコタクは、1971年『そばかす』という作品に初めて登場して以来、韓国漫画の看板スターへと浮上した。漫画の内容は、野球に才能のあった少年トッコタクが父親の反対に悩んだ末、変装をして試合に出て勝利を勝ち取るというもの。読者はやんちゃ坊主トッコタクの現実的な人間味あふれる姿に夢中になり、スポーツと家族愛がうまく絡み合ったイ・サンムならではの感動漫画に泣かされ、笑わされた。

1983年に発表された『走れ!ビリ』は高校野球を背景に描かれたイ・サンム画伯の代表作
一時代の自画像を描いたイ・サンム画伯(本名:パク・ノチョル)は1946年慶尚北道(キョンサンブクト)の金泉(キムチョン)に生まれ、高校在学中だった1963年に大邱(テグ)の新聞社、嶺南日報に連載を始めたことで漫画界に足を踏み入れた。高校卒業後はすぐに上京した彼は、パク・ギジョン、パク・ギジュン兄弟の門下に入り、ここで「イ・サンム」というペンネームをつけてもらった。1966年に雑誌「女学生」で連載されたラブストーリー『ノ・ミホとジュ・リヘ』を機にイ・サンムというペンネームでデビューした。
その後、1970年代の初めに野球少年「トッコタク」が誕生する。主人公らしくないひ弱な体格に、反抗心と嫉妬心に満ちた坊主頭の少年。イ・サンム画伯は全盛期の1970~80年代に雑誌を通じてトッコタクを主人公にした複数の漫画を立て続けに発表した。ヒット作としては『鳩の合唱』、『泣かない少年』、『友情のマウンド』、『走れ!ビリ』などがある。作中でトッコタクはやんちゃ坊主、孤児院から飛び出た反抗児、そして魔球を投げるピッチャーだった。1980年代に高校野球が大ブームとなっていた当時、『僕の名前はトッコタク』などの作品がテレビアニメとして制作され人気を博した。

イ・サンム画伯の『鳩の合唱』(1978年)は、トッコタクの目で見た様々な年齢の家族を描いた物語
トッコタクというキャラクターで30年近く全盛期を謳歌したイ・サンム画伯だが、1990年代には各メディアでゴルフ漫画を連載した。また、つい最近までもフォトショップ、イラストレーター、ペインターなどのグラフィックプログラムを執筆に応用するなど、常に学ぶことを怠らなかった。自分が幼かった頃の1950年代を背景にした、誰もが感動を覚えるような作品を描くのを目標に、最期まで手を休めなかった。
今月の15日から4月14日まで、韓国漫画博物館ではイ・サンム画伯を追悼する「泣かない少年、イ・サンム」展が開かれる。トッコタクが登場し作家を紹介する形で構成されており、展示される作業道具や生前のインタビュー、写真などからイ・サンム画伯の足跡をたどることができる。

韓国漫画博物館で開催される故イ・サンム画伯の追悼展「泣かない少年、イ・サンム」のウェブ招待状
コリアネット イ・ハナ記者
写真:韓国漫画家協会、イ・サンム公式サイト
hlee10@korea.kr