KOREA.netインタビューに応じるウェブトゥーン作家ファン・ジュノ=7日、ソウル、イ・ジュニョン撮影
[ソウル=チョン・ジュリ]
スリラーウェブトゥーン(デジタルコミック)好きの間でウェブトゥーン作家「ファン・ジュノ」は、彼自身が一つのジャンルとされている。連続殺人犯である男女のラブ・ストーリーを描いた「悪縁」で2009年にデビューしたファン作家。「勉強するに良い日(原題)」(2010年)、「人間の森」(2012年)、「未来少女(原題)」(2015年)、「血と肉(原題)」(2019年)、現在連載中の「淘汰教室(原題)」まで、読むほどに背筋が寒くなるような、そんな人間の隠れた怖さを描いている。
ファン氏の代表作は、「人間の森」。実験体として捕らわれたサイコパス殺人鬼たちの収容所を舞台に、施設の制御システムが壊されることで繰り広げられる物語を描いたウェブトゥーンだ。斬新な題材であり、暴力性の高い作品であることから未成年は見ることができないにも関わらず、高い評価を得て、多くのファンを魅了した。英語、日本語、スペイン語、インドネシア語でも翻訳され、海外からも注目が集まった。去年は、ドラマ化も決定した。
KOREA.netは7日、ソウル市内のファン作家の作業室を訪れ、インタビューした。一問一答は以下の通り。
―3年ぶりの連載だが、一日のスケジュールはどのようなものか。
週1回の連載形式なので、数日間はコンテ制作、数日間はスケッチ作業をする。目標の達成度合いによって一日のスケジュールが変わる。ストーリーを文で書いて、その内容に合わせてコンテを制作し、その後、絵を描く。基本的に、この手順で行われるが、最も時間がかかるのがストーリーとコンテ制作で、それぞれ2日ほどかかる。絵を描くのはアシスタント作家に手伝ってもらえるが、ストーリーの作成は、すべて自分で行うため、けっこう時間がかかる。
―ウェブトゥーン作家になったきっかけは。
大学で視覚デザインを専攻したが、4年生の時に休学し、自分のバケットリスト(死ぬまでにしたいこと)の一つだった「漫画づくり」に挑戦することにした。絵を描くのは苦手だったから、ストーリーに重点を置くことにした。それで、ストーリーが重要なジャンルはスリラーだという結論に至った。「スリラー物には連続殺人犯が登場しなければならないけど、サイコパスとは何が違うんだろう」といった疑問から、学校の図書館で様々な本を探して読みながらデビュー作を作った。そうこうしているうちに、14年が経ってしまった(笑)。
―ウェブトゥーンを選んだ理由は。
出版漫画は紙面が限られていて、一つの広い画面に様々なフレームが入る。そのため、視線の流れがとてもダイナミックと言える。一方、ウェブトゥーンは、一つのカットを固定された画面のサイズでしか見ることができないので、演出方法が映像に似ている。ウェブトゥーンは心理描写に適していて、出版漫画はアクションジャンルのようにダイナミックな演出にちょうどいい。僕は繊細に描写する方法を使うので、ウェブトゥーンを選んだ。
―外国人にウェブトゥーンの魅力を紹介するなら。
ウェブトゥーンは、スマートフォンと共に成長したコンテンツだ。スマートフォンというのは、人間を人生から最も遠ざけるツールとも言える。そこで、最もデジタル化したツールを通じてアナログな人生を実現しようとするアイロニーが、ウェブトゥーンの魅力ではないかと思う。
ウェブトゥーン「人間の森」=ファン・ジュノ作家提供
―代表作「人間の森」を読んだ海外読者は、「韓国的な恐怖」と評価する。このような評価についてどう思うか。
僕の作品には幽霊が登場しない。ただ淡々と人間を描く。しかし、今まであまり語られていなかった人間の裏を取り出して語るから怖いと感じるようだ。これまで背を向けてきた部分を暴きだすというか。韓国的な恐怖というのは、人間や社会が作り出した「因果の恐怖」だと言いたい。人間の手よって恐ろしい出来事が起こり、その過程でさらに、人間の卑劣で汚らしい姿が浮き彫りになる。それを「韓国的な恐怖」と感じるのではないだろうか。
—ホラーやスリラーといったジャンルにこだわる理由はあるか。
ウェブトゥーンを作るには、夢を見ているときによるに、頭の中でイメージが浮かばなければならない。そのためには、一つのテーマにハマる必要がある。オーストラリア出身のバンド「エア・サプライ」はこう語った。「私たちが音楽を選んだのではなく、音楽が私たちを選んだ」と。僕も同じだ。僕が作品を選んだのではなく、作品が僕を選んだのだ。これからも暗い人間像に集中して作品を作るつもりだ。
インタビューに応じるファン・ジュノ作家=7日、ソウル、イ・ジュニョン撮影
―ウェブトゥーン作家になって14年目になるが、韓国のウェブトゥーンについて話したいことがたくさんあると思う。2000年代以降、ウェブトゥーンが急成長したことについて聞きたい。
1990年代末から、出版漫画中心の韓国のコミック市場が崩壊した。出版という形式はダメになっても、ストーリーは残る。そのストーリーを持っている人たちが「ウェブトゥーン」という窓口を見つけたのだ。出版漫画だったらデビューさえできなかったかもしれない作家、表現の方法が分からなかった人たちが、ウェブトゥーンという形で語り始めたのだ。それに加えて、とりあえず何でも挑戦し、生き生きと表現するアマチュアリズムも大きな役割を果たしたと思う。
―違法漫画サイトが多いが、著作権問題についてどう思うか。
著作権侵害は、読者の認識に関わるものだと思う。今でも映画を違法で見ようとすれば、いくらでも見ることができるが、あえてそれをしないという文化も、もうできあがっていると感じる。一方、ウェブトゥーンはネットでお金を払わずに読む人があまりにも多い。違法サイトで読んでも、別に問題にならないと思う傾向があるようだ。
―韓国著作権保護院が行う「ウェブトゥーン著作権保護共同キャンペーン(リレー漫画)」に参加したことも、読者の認識を変えるための取り組みなのか。
今までは、こういうキャンペーンに参加したことがなかったが、「やるべき時にはやる」という思いから参加することになった。ワンカットの短いリレーウェブトゥーンで、どれだけ多くの読者が認識を変えるかは分からない。でも、100人のうち1人でも考えを変えてくれるのであれば、それで十分だと思う。いいことではないか。世の中を変えることは、数年でできるものではなく、数十年がかかるかもしれない。なので、あせらずに長い目で見なければならないと思う。
―KOREA.net読者にひと言。
私の作品を読んだ人は、「韓国は暗い」と感じるかもしれない。だが、韓国は「パラサイト」の国ではないと言いたい。(笑)韓国は、BTSのように、明るさも持ち合わせた国だ。僕の作品が暗いだけなので、誤解しないでほしい。
etoilejr@korea.kr