[ソウル=イ・ギョンミ、キム・ソナ]
[映像=イ・ジュニョン]
「感情」が何なのかわからないので。
私はあなたに共感する事はできません。けれどあなたの問題を解決する事はできる。
所詮…人間は誰もがほぼ等しいから。
「ドクターフロスト」より
「ドクターフロスト」は、感情を失った天才心理学者フロストが、来談者の心の病気を心理学的なアプローチで解決していく物語を描いたウェブトゥーン(デジタルコミック)だ。2011年に連載がスタートし、2021年に完結するまで、長年の間フロストを描いたイ・ジョンボム作家はこの作品について、「自分自身を理解することが、どれだけ重要なのかに関する物語」と紹介し、「それを柱として、10年の間、貫いてきた」と説明した。
KOREA.netは先月25日、京畿道・城南市にあるイ作家の作業室でインタビューを行った。自身の近況について「インプットの時期」と表現した。ウェブ小説、映画、ゲーム、ウェブトゥーンなど、様々な作品に触れながら、最近、人々の「心」を動かすものは何なのかに注目しているという。「ドクターフロスト」を長年連載してきただけに、次作の準備に力を入れているようだった。
イ作家の代表作「ドクターフロスト」は、英語・日本語・中国語・インドネシア語など、10の言語で翻訳され、海外でも好評を博している。
ウェブトゥーン「ドクターフロスト」の主人公(真ん中)をはじめとする登場人物=イ・ジョンボム提供
外国人読者の反応について「最初は、国によって反応が違うだろうと思っていたが、韓国とあまり変わらないことに驚いた」というイ作家。韓国人と同じ部分で悩み、泣いたり感動したりするということを、読者が残したコメントを見て、知ったという。「国や文化によって異なる反応も確かにあると思いますが、良いストーリーを作るためには、性別・年齢・文化などは関係なく、共通に感じてもらえる何かを盛り込む必要がある、ということをいまさらながら学びました」
海外でも通じる韓国のウェブトゥーン。これは実際の調査からも分かる。文化体育観光部と韓国国際文化交流振興院が発表した「2023海外韓流実態調査」によると、海外で最も多く消費された韓国文化コンテンツ1位は「ウェブトゥーン」だった。
イ作家は、韓国でウェブトゥーンが成長できた背景としてまず、低い参入障壁を挙げた。映画や演劇、ミュージカルといった従来の大衆芸術は、ある程度の資本と人材が必要だが、ウェブトゥーンの場合、「面白そう」という作家自身のアイディアさえあれば簡単に挑戦できるということだ。万が一、失敗したとしても、作家ひとりなので、リスクが少なくてすむ。そのため、様々な題材やキャラクターを生み出す試みが行われてきた。
また、モバイル端末に最適化している点も、急速な成長に影響を与えたという見解を示した。「スマートフォンがあれば、バスが来るまでのたった5分間で、気軽にウェブトゥーンを読むことができます。今や生活のあらゆる瞬間に、芸術作品を鑑賞する機会があるので、それを可能にしたのが、ウェブトゥーンだと思います。だからこそ、こんなに素早く成長し、私たちの日常を支配したのではないでしょうか。
(左から時計回り)ドラマ「ドクターフロスト」のポスター、「今、私たちの学校は」のワンシーン、「梨泰院クラス」のポスター、映画「コンクリート・ユートピア」のワンシーン=OCN、ネットフリックス、ロッテエンターテインメント、JTBC
数多くのウェブトゥーンがすでにドラマや映画として制作されている。「ドクターフロスト」は2014年にドラマ化された。ウェブトゥーンを映像化するマーケットが大きくなるにつれ、制作のノウハウも蓄積されている。原作の内容をそのまま映像にするものもあれば、映像という形式に合わせて原作のストーリーを大きく変えることもある。最近は、原作ウェブトゥーンの作家が脚本を執筆するケースが増えている。「梨泰院クラス」のチョ・クァンジン作家、「D.P. -脱走兵追跡官-」のキム・ボトン作家、「ムービング」のカンプル作家などが、自分のウェブトゥーンが原作のドラマ・映画の脚本を手掛けた。
イ作家は、「あるストーリーが様々な形式で制作されることは、そのストーリーの可能性を広げる試みだと思うので大歓迎だ」と話した。その上で、「原作者の立場からすると、自分が作ったストーリーを別の方法で解釈してもらえるのは嬉しいし、自分の作品世界を理解してもらえたような気がする」と語った。
世界中のクリエイターを脅かしている著作権侵害問題についても自分の意見を示した。法的措置、コンテンツを提供するプラットフォームを営む企業の取り組み、利用者の認識変化の3つが同時に必要だと主張した。その上で、「韓国発の、とても貴重な芸術形式を守ることだと認識してほしい」と強調した。
続けて「違法サイトでウェブトゥーンを読むのは恥ずかしいと感じる人が増えており、企業は違法盗用の追跡ができる技術を開発している。また、法的制裁に向けた動きもある」としながらも、「作家からすれば、さらなる努力が必要だと思う」と訴えた。
多くのウェブトゥーン作家が首や腰の痛み、肩や手首の疾患といった職業病を患っていると話すイ・ジョンボム作家=キム・スンジュ撮影 photosun@korea.kr
「K-ウェブトゥーン」という表現について、「『K-キムチ』というのと同じでしょう」と笑うイ作家。ウェブトゥーンとは韓国発祥のものだからである。
「ウェブトゥーンの真の成長・グローバル化は、韓国がウェブトゥーンの発祥地であることを皆が認識すると同時に、ウェブトゥーンを読む外国の人々がウェブトゥーンを描く時にこそできるものだと思います。ウェブトゥーンを読んで楽しかったのであれば、ウェブトゥーンを描いてください」
km137426@korea.kr