科学技術

2021.08.10

東京五輪大会5日目の7月27日、幕張メッセAホールで開かれたテコンドー女子67kg超級の準決勝戦 で韓国の李多嬪選手が英国のビアンカ・ウォークデン選手を攻撃する様子=聯合ニュース


[イ・ギョンミ]
[映像=4DREPLAY公式ユーチューブチャンネル]

#1. 東京五輪大会9日目の7月31日。世界陸連の監視機関「インテグリティー・ユニット」は、陸上女子のナイジェリア代表、ブレッシング・オカグバレ選手を暫定的な資格停止処分にしたと発表した。7月19日行われた抜き打ち検査で、禁止薬物の「ヒト成長ホルモン(hGH)」に陽性反応を示したためである。東京五輪に出場中の選手が大会期間中にドーピング違反で摘発されたのは初めてである。

#2. 東京五輪大会5日目の7月27日。幕張メッセAホールで開かれたテコンドー女子67kg超級の準決勝戦。13―10で韓国の李多嬪(イ・ダビン)が左足を高く上げ、相手のビアンカ・ウォークデン(英国)の頭を攻撃した。しかし、主審は李多嬪に減点を宣言。テコンドー韓国代表のイ・チャンゴン監督は直ちにビデオ判定(ビデオ・アシスタント・レフェリー、VAR)を要請した。4D映像を通じてのVAR判定の末、減点はなかったことになった。適時に使ったVARカードのおかげで、李多嬪は25-24で下して決勝に進出し、銀メダルを獲得した。

前述のドーピング摘発とテコンドーで判定が覆ったことには共通点がある。韓国技術が使われたということである。

8日に閉幕した東京五輪。競技の中継や大会運営など、様々な分野において韓国の技術が活用され、優秀な韓国技術の存在感を示したと評価されている。

オカグバレ選手のドーピング違反の判明には、韓国科学技術研究院(KIST)ドーピングコントロールセンターが大きな役割を果たした。ドーピングのない公正な大会にするため、同センターのソン・ジョンヒョンセンター長とソン・チャンミン専任研究員が東京五輪反ドーピング研究所から招待され、禁止薬物のテストや試料分析における韓国のノウハウを共有した。特に注目が集まっているのが、hGHによるドーピングである。hGHを使用すると、筋肉と骨の成長を促進し、負傷後の回復を早める効果があるとされる。しかし、検出することが非常に難しいため、日本が韓国に助けを求める形となった。

同センターは、1986年ソウルアジア競技大会と1988年ソウル夏季五輪でドーピング検査を担当するために1984年に設立された。世界反ドーピング機関(WADA)が発表した報告書によると、禁止薬物のhGHを検出できるすべての技術を持っている国は、韓国・米国・ブラジルの3カ国のみである。


東京五輪の中継では、試合の重要な瞬間を360度回転ビューで見せてくれる映像が世界の視聴者の目を奪った。単純なカメラのアングルで撮った映像から脱し、視聴者にダイナミックさを感じさせた。これは、韓国の4次元特殊映像制作企業である「4DREPLAY」の4DReplay技術で可能になった。

4DReplayは、会場に設置された多くの特殊カメラが、様々な角度から試合の様子を撮影した後、数秒以内にリプレー・ハイライト映像を送信する技術である。東京五輪では、テコンドー・柔道・レスリング・体操・陸上など、50以上の種目が行われる会場11カ所にカメラ約800台が設置された。この技術により、体操女子の跳馬に出場したヨ・ソジョンが空中で体を720度回転させる瞬間や、自転車(BMX)競技で自転車と共に高くジャンプするニック・キンマンの姿をよりリアルに観戦することができた。

特に、公正な判定のためにテコンドーとレスリングには、4DReplay技術を基盤とするVAR判定が導入された。すでに米プロ野球メジャーリーグMLBや米プロバスケットボールNBA、PGAなど、世界的な競技大会の中継で広く使われている。

高速通信規格(5G)、チケットの発売や決済システムにも韓国技術が隠されている。

「サムスン電子」は3月、日本最大手の通信キャリアのNTTドコモに5Gの通信基地局を供給する契約を結んだ。また、韓国情報保護専門企業の「ウィンス」は、NTTドコモが大容量ネットワークの安定性やセキュリティを高めるために推進した事業に選ばれ、IPS(不正侵入防止システム)などの技術を提供した。IPSは、5G通信網の設置とともに、ネットワークセキュリティシステムに欠かせないものである。通信基地局に設置され、ネットワークやサーバーを監視し、不正なアクセスを検知して通信を遮断する役割を担う。

新型コロナウイルスの影響により、東京五輪は無観客で開催されたためにあまり注目されなかったが、チケットの発売システムは韓国の「インターパーク」が構築した。席の決定、決済や払い戻しなど、チケット発売に関する全ての流れを電算システムで管理することができる。2002年の韓日共催ワールドカップ、2011年に大邱(テグ)で開かれた世界陸上競技選手権大会、2018年の平昌(ピョンチャン)冬季オリンピックで培ってきたノウハウが東京五輪で活かされた。

日本は東京五輪を控え、キャッシュレス決済のインフラ強化に乗り出したが、ここには現代カードの「H-ALIS(Hyundai-Advanced Library Card Information System)」が活用された。H-ALISは、次世代パブリッククラウド型クレジット基幹プラットフォームで、クレジット先進国である韓国の現代カードで使用された実績のあるシステムを日本用にローカライゼーションしたソリューションである。現代カード側は「月間1.5億件以上のクレジットカード取引を安定して処理でき、情報通信(IT)技術が結集されている」と説明した。

km137426@korea.kr