映像翻訳の授業を取材するフランス記者(左)=7日、ソウル、イ・ギョンミ撮影
[ソウル・坡州=イ・ギョンミ、ソ・エヨン]
ハン・ガン作家が韓国人として初めてノーベル文学賞を受賞してから1カ月余り。韓国文学に熱い視線が注がれる中、韓国の文学や出版産業の現在と未来を展望する場が海外メディアを対象に設けられた。
KOREA.netをはじめ、日本の読売新聞、時事通信、中国の金橋、フランスのLa Croixなど、韓国に派遣されている海外メディアの記者10人は7日、韓国文学翻訳院と坡州(パジュ)出版文化情報国家産業団地(坡州出版都市)などを訪れた。
韓国文学翻訳院は、韓国文学の翻訳・出版を支援する韓国政府の傘下機関。国内外における文学交流や海外広報、韓国文学や韓国語の芸術文化コンテンツを専門とする翻訳家の育成など、様々な事業を推進している。ハン・ガン作家の作品の場合、翻訳院の支援を受け、28言語・76種類の本が出版された。
韓国文学翻訳院が運営する翻訳アカデミー授業の様子=7日、ソウル、イ・ギョンミ撮影
ハン作家の受賞には、翻訳支援が大きく貢献したと言われる。このような評価に応えるため、翻訳院は専門翻訳教育機関である「翻訳アカデミー」を運営し、翻訳に関するワークショップを開催するなど、翻訳人材を育成するために取り組んでいる。報道陣は、翻訳アカデミーの授業のうち、「コンテンツ翻訳実習深化(映像)」「文学翻訳実習基礎1」を参観した。
韓国の島名を短い字幕の中でどう表現すればいいか、韓国にしかない単語をどう翻訳すれば意味がよく伝わるかなど、翻訳という作業は、まさに「悩みの連続」だった。この日、取り上げられた言葉は「プンシッチプ(軽食屋)」。スナック・バー(snack bar)、トッポキ・プレイス(tteokbokki place)など、様々な意見が出てきた。最も良い言葉を探すため、積極的に討論に臨む学生たちの姿から翻訳の難しさをひしひしと感じた。
坡州出版都市歴史館を見る観客=7日、京畿道・坡州、ソ・エヨン撮影r
続いて、京畿道・坡州市にある「坡州出版都市」に移動した。出版・デザイン・印刷・流通など、出版に関する業者が集まっている場所だ。ハン作家の『少年が来る』『菜食主義者』を出版した会社「チャンビ」のオフィスを訪問し、韓国出版業界について話し合った。
ノーベル文学賞の受賞者の発表後、チャンビには大きな変化があった。本の注文が立て込み、週末・休日にも印刷工場をフル稼働して従来の本の制作期間を短縮したという。韓国だけでなく、海外メディアからも問い合わせが殺到したという。
販売部数からも変化を分かる。チャンビによると、2007年に出版された『菜食主義者』と、2014年に出版された『少年が来る』は、ノーベル文学賞を受賞する前まで、それぞれ100万部、50万部が販売された。それが、受賞直後、1カ月足らずで両方合わせて150万部が販売された。
坡州出版都市内にある図書館=7日、京畿道・坡州、ソ・エヨン撮影
実際に韓国では、ハン作家以外に、他の作家の作品も販売部数が大きく増えた。しかし、このような追い風は、ずっと続かないだろうという懸念の声もある。
これに対し、チャンビのカン・ヨンギュコンテンツ編集部長は、「(ノーベル文学賞の受賞をきっかけに)韓国文学に対する読者の視線が変わり、他の(韓国の)作家や作品に対する海外読者の関心が集まる可能性が高くなった」とし、「最近、韓国の大衆文化が注目されており、ノーベル文学賞の受賞で韓国文化の人気はピークを迎えた。このため、一時的な現象ではなく、持続する構造的な変化だと思う」と話した。
また、チョン・ソンイ文学出版部長は「出版業界は、読者が読みたいと思う作品を把握する努力をしなければならない」とし、「優秀な作家を発掘し、良質な作品を作り続けるという出版社として役割を果たしていく」と話した。
km137426@korea.kr