西暦1500年11月17日、南方の遠く離れた海にある島国「琉球国」から使者が送られてきた。使者は下記の文書を朝鮮国王に伝えた。
「琉球国の中山王尚真が慎んで朝鮮国王殿下にお伝え申し上げます。(中略)常日頃から険しい山を越え、遠く海を渡り、使者を朝鮮に遣わそうとしましたが、航路がわからないままさまよってしまい、しばらく連絡が途絶え、行くことができませんでした。(中略)万に一つの望みではございますが、賢明なる国王殿下が、大いなる心でささやかな真心を汲み取り、書物(大蔵尊経)を我が国に持ち込んで我が民族をご指導くださり、我が国を永久に安定させてくださいませんか。お慕いする心を抑えることができません」
ここでいう琉球国とは、日本最南端の沖縄に存在していた琉球王国のことである。琉球王国の歴史と文化を感じることのできる特別展「琉球王国の宝物」がソウルの国立古宮博物館で開かれている。
同特別展のテーマである琉球王国は、15世紀に登場した独立王国で、地理的利点を生かして周辺国である朝鮮、中国、日本と交流し、文化・芸術など、多方面で独特な文化の花を咲かせた。17世紀前半に薩摩藩の侵入を受け、その後は江戸幕府に干渉され、中国と日本の双方に朝貢を捧げた。1879年に明治政府によって併合され、沖縄県となり現在に至っている。
琉球国王の王冠。那覇市歴史博物館所蔵。簪が目を引く
今回の展示では、琉球王国の歴史と文化を理解できるレベルの高い遺物約200点が公開されている。その中には、日本の国宝33点や重要文化財6点も含まれている。特に、琉球王室の象徴である王冠や王室服飾、王室儀礼用器物など、琉球王国の統治者「尚氏」王家の遺物や漆器、朝鮮の影響を受けた陶器、琉球王国の歴史が綴られた書籍と絵画類、伝統楽器など、様々な遺物が展示されている。沖縄県にある那覇市歴史博物館、沖縄県立博物館・美術館、浦添市美術館、首里城公園管理センター、浦添市教育委員会の5つの機関をはじめ、東京国立博物館や九州国立博物館など様々な機関が協力した。
目を引くのは、琉球王国の服飾や王室儀礼用器物などだ。琉球国王の王冠は18世紀に制作され、国王が貴賓を迎えるときや旧正月などの公式行事に出席する際に着用したとされている。華やかな装飾と簪が印象的だ。伝統的な服装で王室の普段着である「紅型」は、鳳凰と牡丹が色とりどりにあしらわれている。赤地に火炎宝殊の模様が琉球の伝統技法で染色されている。王冠も服飾も日本の国宝で、今回の展示では初日から2週間だけ特別に公開される。
王子用龍宝殊文紅型袷。那覇市歴史博物館所蔵。王子の服飾で、赤地に龍と火炎宝殊の模様が琉球伝統技法で染色されているのが特徴だ
他にも、琉球王国と朝鮮王朝の交流と朝鮮時代の有識者らの琉球王国に対する認識が垣間見られる地図や書籍など、韓国内に存在する貴重な記録物も展示されている。
王室儀礼用器物。那覇市歴史博物館所蔵。女性と国王の私的な生活空間であるウチバルで祝いの宴などの儀式に用いられていた道具だ
展示期間中は、琉球王国の歴史と文化、朝鮮との交流に関する特別講演会も用意されている。特に、展示初日の9日には今回の展示に遺物を出展した那覇市歴史博物館長と浦添市美術館長が自ら琉球王国の歴史と文化について講演する。また、沖縄の伝統公演を観賞できるプログラムもある。
展示会は来年2月8日まで開かれる。同特別展に関するお問い合わせは、国立古宮博物館展示広報課(02-3701-7633)までお寄せください。
コリアネット イ・スンア記者
slee27@korea.kr
天下地図。国立中央博物館。中国13省と朝鮮、琉球が描かれている。日本は描かれておらず、朝鮮は琉球国から5430里離れていると記録されている
黒漆螺鈿花鳥紋皿。浦添市美術館所蔵。多様な琉球王国の漆器制作技法を垣間見ることができる
「泉崎夜月」。東京国立博物館所蔵。江戸時代に発達した風俗画「浮世絵」の画家、葛飾北斎(1760~1849)が描いた「琉球八景」の一つだ
「癸酉年高麗匠人瓦匠造」銘瓦。浦添市教育委員会。13~14世紀。沖縄で発見された高麗系瓦で、琉球王国成立前から沖縄と朝鮮半島が文物交流をしていたことがわかる