調和のとれた美しい配色が趣を感じさせるチョガクポの枕
「(伝統)文化は継承するもの」
チョガクポ(韓国伝統のパッチワーク)で衣料品や寝具などの工芸品を制作する「ビン・コレクション」のカン・グムソン代表はこう語る。
「伝統工芸分野で無形文化財に指定された先生や長い年月をかけて黙々と作品づくりに没頭する職人の方々に比べれば、私はまだまだヒヨコ」と語るカン代表は、二十歳になってからチョガクポの寝具を作り始めた。
「ビン・コレクション」のカン・グムソン代表は、日常生活で使う衣料品や寝具にチョガクポを取り入れ、伝統文化の継承に努めている
カン代表は、韓国の伝統的な文様と色彩が今に息づくチョガクポについて、「韓国女性が引き継いできた精神の結晶であり、貧しかった時代の庶民の哀歓とソンビ(学識が優れて礼節があって義理と原則を守って権力と富裕栄華 を貪らない高潔な人柄を持った人)精神の結晶でもある。何もかもが乏しかった時代、小切れを集めて一針一針丹念に縫い合わせては大事に使っていた先祖の精神がチョガクポには宿っている」と強調する。
昨年プサン(釜山)市で開かれた「韓国‐ASEAN特別首脳会議」で、パク・クネ(朴槿恵)大統領とASEAN諸国の首脳らが、チョガクポをモチーフにしたショールをかけて記念写真を撮っている(写真提供:大統領府)
慶尚北道アンドン(安東)で3人の老婆に育てられたカン代表は、縫い物をする老婆の姿を見ながら成長した。カン代表は、「一緒に住んでいた祖母が韓服を作ったり、蚕を育てたりする姿を見ながら育った。繭で編んだ手作りのチョガクポの枕が日本でも人気を集めたことをきっかけに、本格的にチョガクポの寝具づくりを始めた」と語る。
2013年に韓国を訪れた国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド総裁が、チョ・ユンソン女性家族相(現大統領府政務首席)から贈られたチョガクポのスカーフを巻いて記者会見に臨んでいる
カン代表は、寝具以外にもチョガクポを取り入れ、チョガクポと韓国の伝統文化をいかに継承していこうかと悩んていたところ、偶然その答えを見つけた。2013年、当時女性家族相だった大統領府のチョ・ユンソン政務首席が、国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド総裁が来韓した際に贈るチョガクポのスカーフを制作してほしいと依頼してきた。こうして制作されたチョガクポのスカーフについて、フランス人学者のギ・ソルマン教授は、「これほど見事な多彩な色の調和は、他の文化では見られない。アジアの中で最もファッションで伝統文化を継承しているのが韓国」と絶賛した。
チョガクポは、スカーフだけでなく様々なものに取り入れられている。カシミヤの生地にチョガクポを縫い合わせたショールやマフラー、ひざ掛けをはじめ、衣料品やベビー服、ポソン(韓国伝統の足袋)、帽子など、日常生活で使われる様々な繊維製品に取り入れられている。昨年プサン(釜山)市で開かれた「韓国‐ASEAN特別首脳会議」では、パク・クネ(朴槿恵)大統領とASEAN諸国の首脳及び夫人らがチョガクポをモチーフにしたショールをまとっていた。
カン代表は、「チョガクポは、 一針一針丹念に時間をかけて縫い上げていかなければならない忍耐の要る作業」と話す
カン代表は、「チョガクポの文様を見ていると、幼い頃の畑の溝を思い出す。インサ(仁寺)洞の店を訪れる外国人の中にはマニアもいる」と話す。1日平均1~2人の外国人が訪れるインサドンの店には、チョガクポのひざ掛けがドイツでは爆発的な人気と話すドイツ人の常連客や自国に帰国した後に電子メールで大量の布団を注文したシンガポール人客、店では満足せず工房にまでやって来た香港人客など、エピソードを挙げたらきりがない。
カン代表は、「風車模様のチョガクポには、人生を順調に送ってほしいという願いが込められている。一つひとつの文様には意味があり、手作業も楽ではないが、(チョガクポを)継承していきたい」と笑顔で語る。
記事・写真:コリアネット チョン・ハン記者
hanjeon@korea.kr
イタリア・ミラノで開かれた国際家具博覧会の韓国伝統工芸展に展示されたチョガクポのひざ掛け
チョガクポの枕の中には、繭玉またはそば殻が入っている
チョガクポ模様は、赤ちゃんの産衣にも取り入れられている。先端に飾られている三角形のチョガクポ模様は、厄除けの意味が込められている