保坂祐二
世宗大政治学科教授
韓半島に対する日本の政策は、1876年の江華条約(日朝修好条規)を皮切りに、日清戦争で勝利し、中国の影響力を排除した2段階、米国と日本の桂‐タフト協定を基にした日露戦争の勝利でロシアを追い出し、韓半島を植民地にした3段階で行われた。
このような日本の対韓半島政策は現在も続いているのだろうか。
安倍政権が2013年12月の閣僚会議で決定した「国家安全保障戦略」には、「日本において韓国は、北朝鮮と中国問題を解決するために地政学的に重要な地域」と表記されている。地政学とは、「国の地理的な位置関係が政治や国際関係などに与える影響を研究する学問」で、英国やドイツ、米国などで国家戦略に科学的根拠と正当性を与えるため研究されてきた。
地政学を「政治地理学」と名づけて研究を始めたのは、18世紀のドイツ人哲学者のイマヌエル・カントだ。その後、ドイツで政治地理学が広がり、大陸系地政学へと発展した。地政学の初期の基本ロジックは、「国は高度に発達した有機体で、生存のためにその領土を拡張していく」ということで、領土を侵略することを正当化した。そして、「国家は国土に依存し、生存に向け必要とするのはまず力で、その次が法」と主張し、帝国主義を擁護した。
英国の学者であるハルフォード・マッキンダーは、ハートランドと世界島の支配者が世界の支配者になると主張した。特に、東欧を支配するものがハートランドを制すると主張したが、ヒトラーがそれを実行に移し、ポーランドを侵略した後に独ソ戦を起こした。ヒトラーの試みは失敗に終わったが、これは地政学において有名な事件となった。
米国人学者のニコラス・スパイクマンは、「リムランドを制するものはユーラシアを制し、ユーラシアを制するものは世界の運命を制す」と主張し、「リムランド理論」を提唱した。スパイクマンは、米政府にアドバイスし、「世界の中心への侵入経路にあるリムランド諸国との同盟が必要になる」と主張したが、それが日露戦争の際の日米英同盟と現在の韓米同盟・日米同盟の基礎となった。また、「世界の中心への侵入経路を妨害する強いリムランドが建設されないようにしなければならない」と主張した。彼の主張は、日本がリムランドで帝国を建てようとした太平洋戦争の際に、米国が日本を破ったことで立証された。スパイクマンの理論は、今だに米国に大きな影響を与えている。
日本も地政学を研究する国の一つだ。海洋国家としての日本は、いつも米国と共に動いてきただけでなく、今も米国と日本の視線は大陸に向かっている。日米両国が対立したのは、太平洋戦争が起きた当時だけだ。
1945年までは地政学的な観点から韓半島や中国を目指し、侵略戦争を起こした際、日本では長州藩が力を持っていた。伊藤博文を始めとして、明成皇后(朝鮮時代末期の王妃)を暗殺した三浦梧楼、初代朝鮮総督だった寺内正毅など多くの人々が長州藩出身だった。第2次世界大戦以来、日本内の一党優位体制を築いた自民党内の長州藩派閥は、A級戦犯の疑いがある岸信介から現在の安倍晋三までだが、彼らは元々保守の本流ではない。第2次世界大戦以来の日本の保守本流は、サンフランシスコ体制を認め、日本を旧侵略国と見なし、周りの国に対して謝罪の気持ちを持っている。現在の安倍政権は、昔の長州藩的な思考をする「保守の亜流」である。そのため、安倍政権は地政学に基づき、韓国を日本の影響下におくという長州藩的な思考をすると言っても過言ではない。慰安婦や強制徴用者判決、哨戒機問題などが話題になったとき、安倍政権は韓国の主張をすべて否定した。日本は、韓国が日本に影響を与えるという状況が許せないのだ。
韓国と北朝鮮が平和的に共存することになれば、1876年以来の日本の対韓半島政策、特に長州藩的な思考に基づいている韓半島政策は変わらざるを得ない。今の韓日関係の本質は、韓半島の浮上と、それを受け入れられない日本の時代遅れの政策の衝突から起きた事件である。
これを受け、紆余曲折を経て韓半島に平和が定着すれば、日本の韓国に対する韓半島政策は大きな転機を迎えることになるだろう。