ひと

2020.10.13



[ソウル=イ・ギョンミ]
[映像=キム・シュンジュ、チェ・テスン]

「マスクを着用しましょう」とは、「静かにしましょう」ということです。
悪口や嘘を言わず、不必要な言葉を慎み、他人の話に耳を傾けましょうということです。

「手をよく洗いましょう」とは、「心を磨きましょう」ということです。
心の鏡を磨けば、自身のことが分かり、他の人のことも理解できるようになるでしょう。

「集うことをやめましょう」とは、「孤独な人に寄り添いましょう」ということです。
悲しんでいる人と共に泣き、重い荷を背負っている人に手をさしのべることで、世界はあたたかく愛に満ちあふれるでしょう。


この文は、韓国のある牧師が自身のフェイスブックに投稿した「コロナ時代が伝えるメッセージ」の一部である。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が8月24日、フェイスブックでシェアしたことで注目を集め、多くの人々の心に響き、話題となった。

この文を書いたのは釜山(プサン)で小さな教会を運営する安重徳(アン・ジュンドク)さん。安さんは、この文を書いたきっかけについて「教会に端を発した新型コロナの集団感染事態を受け、とても残念に思った。一部のキリスト教徒らが政府に反した行動をするのを見て、これではいけないと思った」とし、「日ごろからの考えをまとめ、共感してもらいたかった」と話した。

9月9日、コリアネットのオープンスタジオで、安さんに話を聞いた。彼は「ある朝、目が覚めたら有名なっていた」という詩人バイロンの名言を借りて、「名もなき牧師の文に共感してくれた大統領の心遣いに感謝する」と話した。

文在寅大統領は8月24日、自身のフェイスブックに安重徳牧師のメッセージをシェアし、話題となった=文在寅大統領のフェイスブックキャプチャ―



安さんは、「コロナ時代が伝えるメッセージ」で、マスクの着用や手洗い、社会的距離の確保といった新型コロナウイルスの感染防止策の基本となるルールを、信仰の観点から考えてまとめた。

そのうち、「マスクを着用しろというのは、静かにしろという意味だ」の部分に触れ、「今は言葉より、小さな行動が大事な時代である」と強調した。また、社会的距離を確保することで、これまで忘れていたことについて、もう一度考えてみようと提案した。

一部のキリスト教会で強行している対面礼拝について「命にかかわる感染症が広がっている状況で、対面礼拝にこだわってはいけない」とし、「社会的距離の確保や非対面礼拝が、宗教の自由を制限・侵害するとは思わない」と指摘した。

その上で、「(新型コロナのような有事の際には、)キリスト教だけでなく、すべての宗教が公共の役割を果たし、信頼の回復に取り組むべき」と話し、宗教が持つ社会的責任を強調した。

新型コロナの克服における重要ポイントとして、安さんは「生命への尊重」を挙げた。お互いを尊重することで配慮が生まれ、その配慮が共同体意識につながれば、危機を乗り越えられる力になるということである。

安さんは、インタビューの最後にこう語った。
「試練は、いつでも、誰にでも訪れます。しかし、その試練は永遠に続くものではありません。今は苦しいけれど、今のコロナ時代で経験したことをもとに、いつかは、コロナの「せい」ではなく、コロナの「おかげで」自分の人生が変わったと言える日が来ると思います。お互いを抱きしめ、尊重し、愛し、一緒に乗り越えましょう」

km137426@korea.kr