米ニューヨーク・ブロードウェイで大ヒット中の「グレート・ギャツビー」の制作会社、OD COMPANYの辛春洙プロデューサー=ソウル・江南区、イ・ジュニョン
[ソウル=コ・ヒョンチョン]
「インタビューの前に、一つ、面白いものをお見せしましょうか」
ミュージカル「グレート・ギャツビー」のリードプロデューサーである、OD COMPANYのシン・チュンスCEOが、1枚の写真を見せた。ニューヨークのブロードウェイで、公演後に撮った記念写真だそうだ。みんなとても幸せそうな表情で、笑顔がまぶしい。ところがよくみると、現地の俳優たちなのに、「グレート・ギャツビー」と英語ではなく、全員ハングルで書かれたTシャツを着ている。
「実は彼ら、韓国人プロデューサーと作品をやるのが、生まれて初めてなんですよ。彼らにとっても、とてもユニークで特別な経験になったはずです」
辛春洙(シン・チュンス)CEOは、アジア人としては初めてブロードウェイで単独リードプロデューサーを務めた。現地の作曲家や俳優、制作陣にとって忘れられない素敵な記憶となったはずだ。彼は「近頃、ブロードウェイでは、韓国語がよく聞こえてくるんですよ」と話した。「カムサハムニダ(ありがとうございます)」や「ヘンボッケヨ(幸せです)」といった韓国語を覚えてきて、愛情たっぷりの声でシン・チュンス代表に話しかけてくるそうだ。「韓国人として誇りに思う」という彼。
辛春洙CEOが、ミュージカルの本場であるブロードウェイで披露した作品は3本。2009年に初めて挑んだ「ドリームガールズ」は、トライアウト公演の段階で終わり、「Holler If You Hear Me」(2014)と「Doctor Zhivago」(2015)は舞台に上げたものの、早期終了せざるを得なかった。そして今年、再挑戦した「グレート・ギャツビー」が第77回トニー賞を受賞したのだ。トニー賞とは、その年の優れたブロードウェイの作品や俳優、制作者に送られるアメリカの演劇界で最も栄誉のある賞だ。
ポジティブマインドで、夢に向かってチャレンジし続ける彼の活躍を見ていると、「さすが、あだ名通りのドン・キホーテだ」とうなずける。これからの夢は「もっと立派な市民、もっと優しいパパ、さらにユニークなプロデューサーになること」だと語る辛春洙CEOとインタビューを行った。
‐「ブロードウェイ初、韓国人単独リードプロデューサー」、トニー賞の受賞コメントをどうぞ。
とにかく幸せだった。だが、同時にこれからまた新しいスタートだという気持ちにもなった。次の作品に向かって、頑張れる新しいパワーが湧いてくる感じだ。さらに完成度が高い作品を作らなければと思っている。
‐「三転び四起き」、ブロードウェイを諦めなかった理由は何か。
ミュージカルの本場であり、まさにプラットフォームだからだ。米ブロードウェイと英ウェストエンドでの成功なしには、作品が全世界に広がっていくことはない。初めて「OD COMPANY」を立ち上げた時から、自身の作品をミュージカルの本場で披露したいという夢を持っていた。会社名も「Open The Door」の略字だ。新しい公演芸術のドアを開き、より広い世界へ進めという意味が込められている。
現在、ブロードウェイは熱気がすごい。熱すぎるくらいだ。ウェストエンドでの公演の話も進んでいる。さらに、「グレート・ギャツビー」が口コミで話題になり、スペイン、ノルウェー、ドイツ、中国、オーストラリアなどの多くの国からラブコールが殺到している。
‐韓国人単独リードプロデューサーとして、ほとんど現地人で構成されたチームを率いることができた秘訣は何か。
情熱と信頼が彼らの心を動かせたのだと思う。作品に確信を持たせ、集中できるように、リードプロデューサーとして迅速かつ正確な決断を下した。もう一つは、「欠乏感」だ。かつてブロードウェイの舞台に2本の作品を上げたが、成功できなかった。芸術性と完成度に対する「欠乏感」に、夢を叶えたいという情熱が加わり、魔法のようなことが本当に起きた。
‐「グレート・ギャツビー」が、ブロードウェイを虜にした魅力は何か。
作品の吸収力だ。現地の観覧客は「Beautiful」という言葉を使い、これを表現する。プロデューサーとして、最もうれしい言葉が「Beautiful」だ。観客に愛される作品を作ることが、最も難しいことだからだ。
‐ミュージカルとは何か。
魔法だ。ミュージカルは私たちに魔法をかけて、ミュージカルの世界へ導いてくれる。そして、私たちが思いもしなかった素敵な感情や瞬間をプレゼントしてくれる。
‐公演芸術界の後輩らに、メッセージを。
「井の中の蛙大海を知らず」。井戸の中にいる蛙にならないでほしい。芸術的な成果を挙げるために、もっと大胆にチャレンジし、頑張ってほしい。K-ミュージカルは、ブロードウェイでもじゅうぶん通用するし、一つのジャンルにもなりえる。
‐KOREA.netの読者にも、一言。
お互いに対する尊重や配慮が、さらに深まることを願う。尊重と配慮とは、すなわち愛であり、生きていくうえで最も重要な土台であるからだ。愛があふれる世の中で、みんなが幸せになってほしい。
ミュージカル「グレート・ギャツビー」のワンシーン。OD COMPAN Matthew Murphy and Evan Zimmerman
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