世宗特別自治市の世宗湖公園に位置する大統領記録館は朝鮮時代の国璽の保管箱に見立てて建てられた
朝鮮時代には国王の一挙一動が細かく記録された。その記録を担当していた仕官は、時には命に危険が迫っている状況でも王の言動を文章に残し、それを大切に保管した。それが、太祖(テジョ)から哲宗(チョルジョン)に至るまで472年間の歴史的事実が記された『朝鮮王朝実録』だ。
歴史は事実に基づき残され後世に伝えられなければならないという信念は、今日の韓国でも受け継がれている。過去とは比べ物にならないほど膨大な量の現在の韓国に関する記録のうち、国家元帥、つまり大統領に関するあらゆる記録物は「大統領記録館」に保管されている。
世宗(セジョン)特別自治市に建てられた大統領記録館が今年の2月から一般に公開された。韓国の李承晩(イ・スンマン)初代大統領から李明博(イ・ミョンバク)第17代大統領に至るまで、10人の大統領に関する2千万点余りの記録が保管されている記録館では、大統領中心制国家である韓国の歴史の断片を垣間見ることができる。
朝鮮時代の国璽の保管箱に見立てて建てられた正方体の建物には、400余りの記録と物品が展示されている。これは、収蔵されている全記録物の0.002%に過ぎないが、どの展示物も各大統領が執務していた頃の一人がなかなか目にすることの出来ないものばかりであるため、観覧客の関心を集中させるには十分だ。
大統領記録館に展示された歴代大統領の選挙ポスター。10人の大統領を一目で見れるだけでなく、韓国印刷技術の発達史まで把握できる
多様な展示品の中でも最も目を引くのは、なんといっても歴代大統領の選挙ポスターだ。今となってはお年寄りの記憶にも薄い李承晩、尹潽善(ユン・ボソン)、朴正熙(パク・チョンヒ)、崔圭夏(チェ・ギュハ)など歴代大統領の選挙ポスターや関連展示品は、韓国戦争直後の荒野で産業化時代を経て豊かな暮らしを夢見た先代の人々の記憶を鮮明に甦らせる。
3日、大統領記録館を訪れた家族が朴正熙(元)大統領のスピーチの映像を見ている
歴代大統領の名前が刻まれた「RFIDカード」を差し込むと、当時の姿を記録した映像を見ることができる
大統領記録館では、逝去した歴代大統領の生前の姿も動画で見ることができる。歴代大統領の名前が刻まれたカードを差し込むと、在任当時の姿が映し出されるシステムはSF映画を彷彿とさせる。「RFID(無線認識、Radio Frequency Indentification)カード」という特殊なカードに半導体チップが内臓されているからくりだ。
大統領記録館に再現されてある青瓦台の国賓接客室にはQRコード技術が施され、米国のオバマ大統領や中国の習近平国家主席と会談をしているかのように写真を撮ることができる。写真は、大統領記録館の解説者が自らの携帯電話のカメラで習近平国家主席が座っている画面を見せている様子
同記録館では、自分の好きな大統領の映像を見る以外にも様々な体験ができる。自分で公約を作ってみたり、選挙ポスターを撮影したり、または国家議事堂の大統領就任式場を基に作られた空間で就任宣誓式も体験することができる。その他にも大統領執務室に座って写真を撮ったり、QRコード技術が施された国賓接客室で米国のオバマ大統領や中国の習近平国家主席と会談をしているかのように写真を撮ることができる。
大統領記録館のイ・チュンジン学芸研究員は「歴代大統領の動画を選んで見られる点が観覧客に好評だ。公約文の作成など大統領の仕事を体験することで、子供たちが韓国のリーダーシップについて理解を深め、夢を抱くことができると思う」と話した。
世宗特別自治市の湖公園に位置する大統領記録館は無料で公開されている。休館日の月曜日を除いて午前10時から午後5時まで観覧できる。
大統領記録館に関する詳細は下記のURLから。
http://www.pa.go.kr/global/en/main.jsp
コリアネット チョン・ハン記者、ソン・ジナ記者
写真:コリアネット チョン・ハン記者
hanjeon@korea.kr
大統領記録館1階では、歴代大統領の就任宣誓文や各種のスピーチの文言によって作られた肖像画が観覧客を迎える
金泳三(キム・ヨンサム)元大統領が1994年3月に中国を国賓訪問した際に、当時の江沢民国家主席が贈った中国明朝時代の第5代皇帝時代の硯が展示されている。大統領記録館には歴代大統領が各国の首脳から受け取った贈り物48点が公開されている