「小さな映画館企画展」の歴代ポスター=映画振興委員会
[オ・グムファ]
韓国人は映画が大好きだ。映画振興委員会が発表した「2019年韓国映画産業決算発表」によると、同年の韓国人1人当りの年平均観覧数は4.37回で世界1位。ここ数年間のデータを見ても、2023年劇場の売上は1兆2614億ウォン、観客数は1億2514万人で、前年度に比べ増加を見せた。2022年劇場の売上は1兆1602億ウォン、観客数は1億1281万人だった。
コロナ禍前の2019年の水準には及ばないが、2022年から2年連続で年間売上1兆ウォン、年間観客数1億人を突破した。映画館で映画を見ることは、依然として韓国人にとって最も重要なエンターテインメントであることがわかる。
大きな都市に住んでいれば、いつでも気軽に映画館に行けるが、そうでない場合もある。「小さな映画館」とは、まさにこのようなアイデアから生まれた。
「小さな映画館」が誕生したのは、住んでいる地域を問わず、誰もが、映画を楽しめるようにするためだった。地域格差を解消したかったのだ。2013年に、文化体育観光部が「小さな映画館の建設支援」事業を推進した。2014年からは関連事業団を構成し、「小さな映画館企画展」を通じて、商業映画や独立芸術映画の放映および関連プログラムの運営などに取り組んできた。
小さな映画館協会の資料によると、2023年の時点で仁川(インチョン)、蔚山(ウルサン)、京畿道(キョンギド)、江原道(カンウォンド)、忠清北道(チュンチョンブクド)、全羅北道(チョルラブクド)、全羅南道(チョルラナムド)、慶尚北道(キョンサンブクド)、慶尚南道(キョンサンナムド)など11の広域市・道で、63の小さな映画館が設立・運営されている。このうち広域地方の自治体より小さな地域の市や郡で運営される「小さな映画館」は59カ所。人口が2万から5万人前後の疎外地域が中心となっている。 ほとんどの「小さな映画館」が2館までしかなく、全館合わせて約100席前後の規模だ。
「小さな映画館」は、大都市の映画館より規模がはるかに小さいのが特徴だ。しかし、規模が小さければ「小さな映画館」だというわけではない。国や地方自治体が運営し、営利を目的としない公共上映館でなければならないのだ。さらに、チケット代も普通の映画館の半額以下だ。
エンデミックになり、ニューノーマルが定着した。劇場の存在を懐疑的に思う人もいる中、公共事業として維持されている「小さな映画館」は、存廃の危機を迎えたこともあった。しかし、「小さな映画館」を守り、発展させるための多くの努力があった。その結果、「小さな映画館」は、地域社会を活性化する公共施設として、新しい可能性を示している。
高敞郡・洞里シネマの内部の様子=高敞文化観光財団
高敞文化観光財団が運営する全羅北(チョルラブク)道・高敞(コチャン)郡・東里(トンリ)シネマは、2014年に開館し、今年で10周年を迎えた「小さな映画館」だ。代表的な「小さな映画館」として、最新映画や芸術映画、3D映画など多様な上映システムを備えている。
また、全国で唯一10年連続で「小さな映画館企画展」を開催した。農村映画祭や障害者人権映画祭などの多様なイベントを開き、お年寄りや障害者のような社会・文化的弱者を含む誰もが、文化的利益を享受することができるように尽力した。人口約5万人の高敞郡で、東里シネマの累積観覧客は現在50万人を超えた。住民に愛されている「小さな映画館」は、地域社会の文化交流の場としても役割を果たしている。
人口約2万3千人の茂朱郡には、茂朱サンゴル映画祭を見るために毎年約3万人の観客が訪れる=6月、茂朱・茂朱サンゴル映画祭フェイスブック
茂朱サンゴル映画館は、茂朱山里文化財団が委託を受けて運営する全羅北道・茂朱(ムジュ)郡にある「小さな映画館」だ。茂朱郡民の文化享有権のために、最新の作品や多様な映画を上映するだけでなく、文化イベントも行っている。人口約2万3千人の茂朱郡には、茂朱サンゴル映画祭を見るために、毎年約3万人の観客が訪れる。
今年も「小さな映画館企画展」に参加する茂朱サンゴル文化財団は、普段は接することが難しかった独立映画や芸術映画を厳選し上映する。さらに、映画連携のトークプログラムも行う予定だ。
「翰林小さな映画館」で上映された「2023年翰林小さな映画館企画展」=済州映像・文化産業振興院
「翰林(ハンリム)小さな映画館」は、済州(チェジュ)映像・文化産業振興院が運営している。2021年に開館し、済州では初であり、唯一の「小さな映画館」だ。翰林邑の人口は約2万人だが、観覧数は、2022年には2万5千人、2023年には5万3千人と増加傾向にある。
翰林の小さな映画館は、既存の「小さな映画館」とは運営システムとが異なる。利用者の利便性向上に向けて、迅速な対応を行い、映画を楽しめる環境づくりに尽力している。インスタグラムなどを通じて観客と活発なコミュニケーションをとっているのだ。今年も3年連続で「小さな映画館企画展」に参加する。「翰林小さな映画館」は、10月から11月まで毎週火・木・土・日曜日に「楽しい週末」をテーマに、済州のいろんな映画を紹介する。映画を楽しむことはもちろん、体験型の教育機会も提供する予定だ。
jane0614@korea.kr