人工知能を利用した医療診断ソフトウェアについて説明するルニットの徐杋錫代表=キム・シュンジュ
[ソウル=チョン・ジュリ、イ・ギョンミ]
コリアネットは2019年を迎え、様々な分野で韓国の革新成長をリードする企業を直接訪れ、革新成長の現状について連載する。第3弾として、革新成長における主なエンジンと言える人工知能(AI0技術で医療革新を目指す企業「ルニット(Lunit)」を紹介する。
咳が止まらなくて病院を訪れた患者がいる。患者が医者に自分の症状を説明し、レントゲンを撮る。医者はレントゲン写真を見て、病気が疑われる場合はCT検査などを追加的に行う。そこでもし、AIがレントゲン撮影の段階で、人間には見えない微妙な異常症状をキャッチすることができるなら、病気の早期診断の可能性が高くなるだろう。ここに注目した韓国企業がある。AIアルゴリズムで医療映像から医学的特徴を発見し、医者がさらに正確な診断を行えるよう、医療映像検出補助ソフトウェアを開発する企業「ルニット」だ。
去年12月28日に行われたインタビューで、ルニットの徐杋錫(ソ・ボムソク)代表は、革新について「新規性(Novelty)と有用性(Utility)の出会い」と定義した。彼は、「新しくて斬新なのも重要だが、有用性がなければ革新とは言えない」とし、「人工知能で精度を最大限に高めることができる分野を探しているうちに、たった1%の精度向上によりもっと多くの命を救える医療分野を選んだ」と話した。
開発したソフトウェアを立ち上げ、披露する徐杋錫代表=キム・シュンジュ
AIアルゴリズム開発に向けた豊富な医療映像データの確保
2013年設立されたルニットは、医療映像データを分析・学習する「ディープラーニング」技術を用いた胸部レントゲンソフトウェア(Lunit INSIGHT for ChestRadiography)や乳がん検診のマンモグラフィーソフトウェア(Lunit INSIGHT for Mammography)を開発した。ソフトウェアで映像を立ち上げると、病気が疑われる位置が色(Heatmap)で表示され、病変の存在可能性が数値(Abnormality Score、%)で表れる。医者は、この数値を参考に、診断を確定する。徐代表は、ソフトウェアを開発した動機について、「胸部レントゲンと乳房映像の場合、年平均撮影件数が1兆を超えるほど、世界で最もよく使われる検査方法」とし、「CTやMRIとは違って、両方とも3D映像を2Dにするため精度が低く、診断が難しい」と話した。
ルニットは、韓国を始めとした世界各国の医療機関18カ所と協力してデータを収集する。異常のある部位がはっきり分かるには、医療映像の学習は欠かせないからだ。これに関して徐代表は、「韓国は米国や中国に比べ医療費が安くて検査が容易であるため、資料が豊富だ」と説明した。
世界でAI技術力を立証
ルニットのディープラーニング技術は、世界大会で上位の成績をおさめ、すでに技術の優秀性を認められた。2017年にはAIで乳癌の転移を予測する国際コンテスト(CAMELYON Grand Challenge2017)で1位を獲得した。また、米調査機関CBインサイツが選定する「世界100大人工知能企業」に、韓国企業としては唯一名を連ねた。
医療用画像管理システム(PACS)開発者の一人のエリオット・シーガル博士や、医療技術企業「ヒギ(higi)」の創業者で米ジョンズ・ホプキンズ大学のカン・シディキ教授など世界的に有名な放射線医学の専門家に、企業の諮問委員を務めさせたこともルニット発展に影響したと言える。
去年11月に行われた「北米放射線学会2018」に設置されたルニットのブースで写真撮影するカン・シディキ教授(右から4番目)、エリオット・シーガル博士(右から3番目)、徐杋錫代表(右から2番目)=ルニット
徐代表は、ルニットの企業哲学について、「AI技術で医学進歩に貢献すること」と話した。その上で、「人間の目に見えない情報を検出し、医者の診断における手助けとなり、最終的には患者のために役立つことがルニットの長期目標」と強調した。
AIは、第4次産業革命をリードする核心となる技術の一つ。しかし、AI技術が発展するにつれ、期待が大きく膨らむ一方で、懸念される点もある。ここで、ルニットの目標は、我々に示唆を与えてくれる。人間を完全に「代替」する技術ではなく、人間の能力を「拡張」させる技術を志向するからだ。ルニットが夢見るAI医療の革新が期待される。
etoilejr@korea.kr