文化

2024.12.05



[ソウル=イ・ギョンミ]
[写真・映像=イ・ギョンミ]

「ようこそ、マダンノリへ」

楽しい歌で幕が開き、シルムに励む男性らと板跳びする女性らの間で、春香(チュンヒャン)と夢龍(モンリョン)が互いに一目ぼれする。春香の母親は、この二人を引き離そうとして、ある男性の観客の前で倒れる。すると、客席は大爆笑に包まれた。その後、盲目の沈鶴奎(シム・ハッキュ)が赤ん坊の清(チョン)を抱いて登場する。かわいそうな様子に心を痛めていると、興夫(フンブ)家の15兄妹が楽しいリズムに合わせて「ご飯ください!」と叫びながら出てくる。

ストーリーは、古典の内容そのままであるが、予想外の方向へと展開していく。時間が流れ、春香は漢陽(ハニャン、昔のソウル)へ行った夢龍を待ち、沈清は父親の目を治すために海に身を投げる。興夫は巣から落ちてけがをしたツバメの脚を治療し、ツバメからお礼としてフクベの種をもらう。

華やかな踊りと歌が続き、退屈する暇がない。観客は、いつ、どこから誰が登場するかわからずドキドキし、泣いたり笑ったりと忙しい。また、物語の流れが予測できないため、目が離せない。


先月28日、ソウル市内の国立劇場では「マダンノリ」という韓国の伝統公演が行われた。

「マダンノリ」は、韓国の古典作品に風刺とユーモアを加えて現代的にアレンジし、歌や踊りなどで表現する公演のこと。今回は、韓国の有名古典である「沈清伝」「春香伝」「興夫伝」の3作品から、最も代表的なシーンを組み合わせて新しい作品にした。

公演中、観客に声をかける「沈清伝」の沈鶴奎(シム・ハッキュ)

公演中、観客に声をかける「沈清伝」の沈鶴奎(シム・ハッキュ)


古典の登場人物がお互いの物語を行き来するのがポイント。春香と夢龍の前に沈鶴奎が登場したり、沈鶴奎の前に興夫家の家族が登場する。まるで一つの物語であるかのように自然に繰り広げられるストーリーが面白い。

円形の舞台は、どの方向からも公演を楽しめるよう設計されている。しかも、観客が少し手を伸ばせば俳優らに届くほど、舞台と客席は近い。そのため、俳優は観客に質問をしたり、観客とハグしたりと、自由な雰囲気だ。観客も、ただ静かに座って見るのではなく、合いの手を入れ、興に乗って肩を揺らして踊るなど、一緒に公演を満喫した。

バックグラウンド音楽や歌の伴奏、ピッタリの音響効果といったすべての音楽は、国楽団がその場で直接演奏する。300着以上の派手な衣装や小物を観賞することも、公演を楽しむコツの一つ。

古典に現代的な要素が加わるマダンノリ。大きなカメラで撮影するシーンも出てくる。

古典に現代的な要素が加わるマダンノリ。大きなカメラで撮影するシーンも出てくる。


マダンノリは時代を反映した社会の懸案を取り上げながら、古典に現代的要素も加えた。

「沈清伝」で、盲目の父親が娘のために乳をもらおうと、町の女性らにお願いするシーンでは、「ディンクス世帯」「韓国は少子化問題で大変だわ」といったセリフが出る。また、寺に供養米を納める約束をするシーンでは、タブレット端末を利用して録音して、サインもする。

春香伝のシーンでは、韓国で流行りのサバイバル・バラエティー番組の形式が用いられた。最近、大ブレイクしたBLACKPINKのロゼとブルーノ・マーズのコラボ曲「APT.」を引用した曲が流れ、人々の関心を引いた。

公演の終わりに祝砲が鳴り響き、観客も舞台に上がって一緒に踊り、盛り上がった。

同公演は、来年1月30日まで、毎週火・水・木・土・日、午後3時と7時30分に開催される。

km137426@korea.kr