食・旅行

2023.10.19

明陵について観客に説明する猫のミョミョちゃん=17日、京畿道・高陽

明陵について観客に説明する猫のミョミョちゃん=17日、京畿道・高陽


[高陽=キム・ヘリン]
[写真=韓国文化財財団]

「私はこの世とあの世を自由に行き来する猫、ミョミョでございます。人間が私の話を聞いてくれるのは、300年ぶりでございます。」

16日の夜7時半ごろ、闇が広がっている王陵(王様の墓)の入り口に猫を演じる俳優が登場し、観客に声をかけた。「神様の庭に、生きているものの足が入ります」と王陵に告げるミョミョちゃんの後ろに、ヘッドホンを付けた30人の観客が、ちょうちんを手にして歩き始めた。


西五陵のナイト・ツアー「ヤビョルヘン」は、朝鮮の第19代王の粛宗(スクジョン)が飼っていた猫をモチーフにしたキャラクター、猫のミョミョちゃんの案内で夜の王陵を楽しむもの。韓国の伝統舞踊公演や影絵劇、ライトアップが披露されるなど、楽しく歴史を学ぶことができる。

京畿道・高陽(コヤン)市に位置する「西五陵(ソオルン)」は、5つの墓がある王陵群。

ラジオドラマを見ている観客ら=17日、京畿道・高陽

ラジオドラマを聴いている観客ら=17日、京畿道・高陽


ミョミョちゃんの案内を受け、最初に訪れたのは「明陵(ミョンヌン)」。粛宗と、2番目の王妃・ 仁顕(イニョン)王后、3番目の王妃・仁元(イヌォン)王后の墓である。ミョミョちゃんは「1701年、仁顕王后が先にここに葬られ、1720年に粛宗王様が隣に葬られました」と説明した。また、紅箭門(『赤い矢の門』という意味。鳥居に相当)、祭事に使われた「丁」字型の建物など、朝鮮時代の王陵の構成要素や特徴も紹介した。

その後、墓を背景に、幼いころから宮中に参内し、34年間の短い人生が終わるまで、起伏に富んだ人生を送った仁顕王后を題材にしたラジオドラマが披露された。観客の大半は、切ない表情でラジオドラマを聴いていた。

明陵を過ぎ、暗い森路に沿ってしばらく歩くと、禧嬪張氏の墓「大嬪墓(テビンミョ)」に着いた。禧嬪張氏は、粛宗から寵愛され、王妃の座に就いたが、のちに廃位された。

禧嬪張氏の人生を描いた伝統舞踊公演=17日、京畿道・高陽

禧嬪張氏の人生を描いた伝統舞踊公演=17日、京畿道・高陽


「私の墓に来るまでの道は、西五陵の道の中で一番狭く、足元も悪いのに、なぜ来たのか」
わだかまりが残っているような、恨めしそうな禧嬪張氏の声が聞こえた。その後、墓の前では禧嬪張氏の波乱万丈な人生を表現した伝統舞踊公演が披露された。

大嬪墓を過ぎて、德宗(ドクジョン、1438~1457)と昭恵(ソヘ)王后の墓である「敬陵(キョンヌン)」に到着した。徳宗は、第7代王の世祖(セジョ)の長男で、皇太子の時に病気で早世し、その死後、息子である第9代王の成宗(ソンジョン)によって王に格上げされた。徳宗と荘祖(チャンジョ、思悼世子)の物語を描いた影絵劇を見た後、歴代王の御真影が様々な表情を見せる映像を鑑賞した。

仁敬(インギョン)王后が葬られている翼陵(イクヌン)では、粛宗が観客を待っていた。粛宗とミョミョちゃんの300年ぶりの再会と別れのシーンが演出された。参加者らは、美しくライトアップされた森の様子を写真に収めていた。

話し合う粛宗と猫のミョミョちゃん=17日、京畿道・高陽

言葉を交わす粛宗と猫のミョミョちゃん=17日、京畿道・高陽


ツアーが終わり、入り口に戻ってくると、すでに夜の9時が過ぎていた。ミョミョちゃんは「それでは、私はあの世へ戻ります」と、別れの挨拶をした。

友だちと一緒に仁川(インチョン)から来たというチョン・ウジン氏は、「ただガイドに付いていくだけではなく、質問に答えたり、様々なコンテンツを体験したりして、すごく楽しかった」とし、「歴史についても新しい知識を得ることができ、とても有意義な時間だった」と語った。

夜の西五陵が楽しめる「ヤビョルヘン」は、22日まで一日3回開催される。他の朝鮮王陵9カ所でも、朝鮮王陵を国内外に発信するために企画されたイベント「2023朝鮮王陵文化祭」が行われる。

kimhyelin211@korea.kr