ライトアップされた後苑の「芙蓉池」と「宙合楼」=吉岡香織撮影
[東京=吉岡香織(日本)]
[映像=文化財庁公式YouTubeチャンネル]
今年の春にコリアネットでも紹介された、昌徳宮と後苑の夜間観覧イベント「月明かり紀行」。
(https://japanese.korea.net/NewsFocus/Culture/view?articleId=197522&pageIndex=2)
毎年上期・下期の2回の開催期間があります。コロナウィルス感染症の影響のため現在は異なりますが、2019年までは海外旅行者専用の曜日があり、日本語解説案内をうけながら観覧しました。
わたしはこれまで3回参加。初めて参加したのは2017年でした。すっかり魅了され毎年行くほどの意気込みだったのですが、2018年は、渡韓のタイミングが開催日と重ならなかったのです。
そのため、翌年は必ず参加しようと作戦を練りました。チケットは事前購入が必要ですが、詳細案内と発売はわりと直前で、チケット購入後に急遽渡韓スケジュールを組むのはなかなか難しい。そこで、以前の傾向を分析して開催日程の目星をつけ、仕事の休暇取得もそれに合うように調整し、航空券を購入しておきました。幸い、予想通り開催日と100%マッチして、発売と同時にチケット購入できたのです。おかげで、2019年には上期・下期の2回とも参加しました。こんな風に調査をして計画を立てるのも、韓国旅行の楽しみの一つではないでしょうか。
月明かり紀行の観覧動線=吉岡香織撮影
開催当日、昌徳宮への入場口である「敦化門」前に集合。パンフレットと音声レシーバーを受け取り、英語、日本語など、解説言語別のチームごとに時間差で入場していきます。人が写り込みすぎず美しい風景を撮影できるよう配慮されているのでしょう。
昌徳宮は1997年にユネスコ世界遺産に登録されています。1395年に建てられた景福宮が朝鮮王朝の正宮でしたが、1592年に起きた壬辰倭乱(文禄・慶長の役)の際に多大な損傷を受けたため、以後270年間は昌徳宮が正宮として使われていたそうです。
提灯を受け取った後、まずは1411年に架けられ韓国王宮の中で最古の石橋といわれる「錦川橋(禁川橋とも)」を渡り、正殿の「仁政殿」へ向かいます。ライトアップされた王宮や景色はあまりにも美しく、何度も感嘆の吐息が漏れました。正殿から振り返ると南山ソウルタワーなども見えます。
そして「楽善斎」へと向かって歩いていると、どこからともなく大笒という笛の音色が聞こえてきます。木枠窓の装飾を楽しみ、裏庭から石段を登っていくと、「上涼亭」という六角形の楼閣があり、「月明かり紀行」でなければ立ち入ることができないエリアに行くことができます。大笒はここで生演奏されていました。ここから、都市と橙色に照らされた王宮、両方の夜景を眺めることができ、いま自分がどの時代で暮らしているのかわからなくなりそうな、不思議な感覚を味わうことができます。
昌徳宮後苑=iclickart(上記の写真は著作権法によって保護されています。無断転載、転用、複製などの二次利用を固く禁じます。)
そして韓国唯一の宮廷庭園といわれる「後苑」へと進みます。自然林や地形を生かして作られているので、庭園といっても広い森です。夜に森の中を歩くこと自体がなかなか経験できないことですよね。
「宮廷女官チャングムの誓い」など歴史ドラマにも度々登場する有名な「芙蓉池」や「宙合楼」は、古いスマートフォンで撮影しただけの私をも「名カメラマン」にしてくれるほど優美です。「暎花堂」で演奏されているコムンゴの音色に包まれながらの観覧は、何度参加しても感動します。
さらに、一枚岩を削ってつくられた「不老門」をくぐり「演慶堂」にたどり着くと、伝統茶と伝統菓子や「月明かり紀行」オリジナルのお土産が用意されています。茶菓子をいただきながら、国楽演奏、舞踊、パンソリなどの伝統芸術公演を鑑賞します。歴史物語を題材としたカラフルな影絵など、伝統芸術と現代芸術を組み合わせているところも魅力的です。
ずっと観覧し続けたいところですが、「後苑森の道」を韓国伝統提灯(提橙)の明かりを頼りに歩き、残念な気持ちを抱えて出口へと向かいます。かなりの暗闇ですが、ところどころ木々やお花がライトアップされていて綺麗です。
仁政殿の様子=iclickart(上記の写真は著作権法によって保護されています。無断転載、転用、複製などの二次利用を固く禁じます。)
仁政殿は1910年に日本が韓国を併合するという条約が締結された場所であり(武井一著『ソウルの王宮めぐり』)、楽善斎は、大韓帝国最後の皇太子、李垠・英親王の妃となった、李(梨本宮)方子さんが1989年に亡くなられるまで晩年を過ごされたところでもあります。日本とは、さまざまな意味で非常にゆかりの深い場所です。
解説ガイドさんのお話は、韓国ドラマの内容を交えたりして、とてもユーモラスで面白いです。ライトアップは当然、素晴らしく美しいです。そこにさらに、その場所にまつわる様々な背景をも含めて眺めることができたら、昌徳宮の本当の姿や美しさ、いまここに宮殿が残っていることや、共にいられることの喜びを、より深く感じることができるのではないかと思います。
残念ながらこの秋の開催はないようです。外国人旅行者の参加が可能になれば、著名な韓国観光ウェブサイトやSNSでお知らせがあると思います。「月明かり紀行」の開催についての投稿があったら、ぜひチェックしてみてくださいね。
*この記事は、日本のコリアネット名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。
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