駐韓ニュージーランド大使館で、コリアネットのインタビューに応じたグレイシー・キム作家。写真は、自身の小説「ギフテッド・クラン」でインスピレーションを受けた韓国の伝説や説話について説明する様子=20日、ソウル・中区
[ユン・ソジョン、キム・ジェヨン]
[写真=ジョン・ハン]
[映像=ジョン・ハン、イ・ジュニョン]
檀君(タングン)神話に登場する熊は、洞窟での生活を我慢して人間になった。しかし、1人残された虎はどうなったのだろうか。
海外で大人気の子ども用ファンタジー小説、「ギフテッド・クラン(Gifted Clan)」のストーリーは、このような問いかけから始まる。
「ギフテッド・クラン(gifted clan)」は韓国系ニュージーランド人のグレイシー・キム作家が、2021年に英語で出版した「最後に落ちた星」、「最後に落ちた月」、「最後に落ちた王国」の3冊で構成されたシリーズだ。小説には、熊の部族と虎の部族、鬼、人面鳥、伝説の動物であるヘテ、三足烏など韓国の伝説や説話の中の不思議な生き物が登場する。「ギフテッド・クラン」はニューヨークタイムズのベストセラーに選ばれ、ディズニー社もドラマの制作を検討するほど人気を集めている。
キム作家は、駐韓ニュージーランド大使館の韓-ニュージーランド創造協力主賓として招かれ、6年ぶりに韓国を訪れた。20日、ソウル・中区にあるニュージーランド大使館でインタビューを行った。キム作家は「韓国の昔話はギリシャ・ローマ神話と肩を並べるくらい素晴らしい。みんなに愛されるストーリーになると信じている」とし、韓国の伝説や神話に深い愛情を示した。彼女は「幼い頃、おばあちゃんが聞かせてくれた昔話に夢中だった」として「長い間、口から口へと伝えられた韓国の伝説や説話、魔法の話はとても魅力的で新鮮だ」と話した。
「ギフテッド・クラン」は、魔法が使える在米韓国人家族の養子になった10代の少女「ライリー・オ(Riley Oh)」が、姉を救うために冒険に出て遭遇するストーリーをまとめた。特に、冒険をしながら悟る自分の真のアイデンティティと家族愛について繊細に描かれている。韓国の伝説や説話の中の不思議な生き物が登場し、ピンチのライリーを助けてくれる。読者は、作品を読んでいるうちに韓国の伝説の世界にだんだんとハマっていく。アマゾン(Amazon)やグッド・リーズ(Good Reads)のようなウェブサイトでは、「1度開いたら手放せなくなる本」、「韓国にこれほど素晴らしい説話や神話があることを、なぜ今まで知らなかったのか」という読者のレビューがたくさんある。
檀君神話が一番好きだというキム作家は、「洞窟の中で1人残った虎は、どうなったのか」という疑問からこの作品のすべてが始まったと話した。また、人物設定やプロットの作成においても「もしも」という問いかけがとても重要だと強調した。彼女は「私たちは熊の子孫なのか」、「虎はどうなったのだろうか」、「熊部族と虎部族の子孫が、今の時代に移民者として生きているならば」といった様々な問いを繰り返しながら、人物像を作り上げ、新しいストーリーを生み出していったと話した
実は、キム作家は元外交官だ。幼い頃、家族でニュージーランドに移民し、ニュージーランドで育った。ニュージーランドの外交官として10年以上勤めた経歴もある。ある日、彼女はタイペイの道路で、子どもが車にひかれて死亡するのを目撃した。目の前で起きた悲惨な事故は、彼女の人生を180度変えた。彼女は「残りの人生を有意義に送りたい」と思い、作家になった。自分のように、アイデンティティをめぐる葛藤や文化的混乱に悩む移民の子どもたちのために本を書くことを決めた。彼女は「幼い頃に韓国からニュージーランドに渡ってきたので、アイデンティティの混乱や葛藤が生じた。主人公のライリーの冒険には、幼い頃の私の悩みや感情があらわれている。」と話した。
駐韓ニュージーランド大使館で行ったインタビューで、来年、発売予定の「ギフテッド・クラン」シリーズの韓国語版と新しいシリーズ「ドリーム・スリンガー」を紹介するグレイシー・キム作家=20日、ソウル・中区