景福宮を背景に写真撮影をするダニエル・チューダー氏=13日、ソウル、イ・ジュニョン撮影
[ソウル=ソ・エヨン]
英国出身の作家ダニエル・チューダー氏の新作、長編小説「Last Prince(原題)」は、大韓帝国の初代皇帝・高宗(コジョン)の五男である義親王・李堈(イ・ガン、1877~1955)や、女性独立運動家のキム・ランサ(1872~1919)など、韓国の歴史上の人物を新しい視点から取り上げている。
チューダー氏は13日に行われたインタビューで、「私の望みは、小説を読んだ読者が李堈やキム・ランサといった歴史上の人物に関心を持ってくれること」とし、「もっと多くの人々が、歴史の中に埋もれた人物を記憶し、注目してくれたらと思う気持ちで、この小説を書いた」と語った。
チューダー氏は元記者という経歴の持ち主で、現在は作家や事業家といった様々な分野で活躍している。これまで韓国の政治や社会など、現在の懸案に関する文を書いた。2017年には青瓦台(旧大統領府)・海外言論秘書官室で諮問を担当した。
韓国人にも李堈とキム・ランサは、あまり知られていない。チューダー氏がこの二人に注目した理由は何だろうか。
「Last Prince」の始まりは12年前までにさかのぼる。2012年、英エコノミスト誌の韓国特派員として働いていたチューダー氏は取材のために全州(チョンジュ)市を訪れた。そこで、李堈の息子である李錫(イ・ソク)に会って話を聞いた。李堈の波乱万丈な人生を題材にした本を、いつか必ず書きたいと思ったが、毎日が忙しく、小説を書くのが難しい状況が続いた。2019年から新型コロナウイルスが拡大したことを受け、本格的に執筆に没頭した。5年にわたって韓国や海外を行き来し、資料を調べ、インタビューを行うなど、取材と執筆を同時に進めた。
外国人が韓国の歴史について書くのは、珍しいのではないかという記者に、チューダー氏は「私が韓国人だったら、おそらく歴史には興味がなかったと思う」とし、「韓国人ではない外国人の目で見る歴史であること、外国人の記者という私の背景、また自分の好奇心や探求心があったからもっと興味深い文になった」と話した。
自分の著書「Last Prince」を読むダニエル・チューダー氏=ダニエル・チューダー提供
この小説は、激変の時代を生き抜いた人々の人生に焦点を合わせ、現在を生きる我々が忘れてはならないことは何かという質問を投げかける。
チューダー氏は、「小説の主人公の李堈は、短所も弱点も多い人物だったが、独立運動家に出会った後、人生の目的を見つけた」とし、「その過程の中で、李堈は成長し、目覚めたと思う」と話す。その上で、「彼の人生は、誰もが共感できる『普遍的な人間の成長ストーリー』であり、誰もが身近に感じながら読むことができるだろう」と語った。
キム・ランサも小説の中で欠かせない主人公の一人。学生の結婚を禁じた梨花学堂に既婚者として入学するなど、当時の女性の限界を乗り越えた人物。朝鮮時代、女子学生としては初めて米国で学んだキム・ランサのことを、チューダー氏は「不当に忘れられた人物」と評価した。「柳寛順(ユ・グァンスン)は有名だが、彼女に独立運動の精神を教えた先生であるキム・ランサのことは知られていない」とし、「李堈はもちろんキム・ランサも、その名前が人々の記憶に残ってほしいと思い、小説の人物として取り上げた」とした。
ただ、「Last Prince」は歴史書ではなく、チューダー氏の想像力によって作り上げられた架空の物語なので、フィクション小説として読んでほしいと呼びかけた。
チューダー氏は「Last Prince」を英語で書いたが、韓国語版が先に出版された。海外での出版も考えているという。来年には英語版が出る予定だ。
次回作では、韓国の少子化問題について書きたいというチューダー氏。「父親になってから少子化問題に関心を持つようになった」とし、「韓国をはじめ、世界各国における少子化の現状を調べるため、人類学者や経済学者、社会学者といった専門家のインタビューをすでに行っている」と語った。
xuaiy@korea.kr