25日に幕を閉じたカンヌ国際映画祭で、3本の韓国映画が大きな反響を呼んだ。この3本の映画は、試写会のチケットが完売し、上映後に観客と評論家らからスタンディングオベーションを受けた。話題の作品は、「注目すべき視線」部門に招待されたチョン・ジュリ監督(34)の「ドヒ」、「ミッドナイド・スクリーン」部門で上映されたチャン監督の「標的」、監督週間に招待されたキム・ソンフン監督(43)の「最後まで行く」だ。3作品ともデビュー作、または2作目という新人監督による作品だ。
カンヌ国際映画祭で「ドヒ」が上映された後、観客がスタンディングオベーションを送っている(写真提供:ムービー・コラージュ)
「ドヒ」のワンシーン(写真提供:ムービー・コラージュ)
ペ・ドゥナ、キム・セロン、ソン・セビョクの3人の俳優が出演した「ドヒ」は、型破りの素材が取り上げられている。ある漁村の交番所長として転勤を命じられた若い女性ヨンナム(ペ・ドゥナ)が、養父から虐待を受けるドヒ(キム・セロン)に出会うところから物語が始まる。ヨンナムは、ドヒを自分の家に住まわるが、彼女の過去を知った養父はヨンナムを危険に陥れる。この作品は、社会の不条理と人権問題を取り上げ、人間の本能と先入観をテーマにしている。人物の感情を巧みに読み取って伝えようというメッセージへのこだわりが光る映画だ。
19日、映画の上映が終わると、観客は立ち上がってスタンディング・オベーションを送った。海外メディア各社は、シナリオや俳優の演技、美しい映像などが全てにおいて完璧だったと評した。カンヌ国際映画祭のクリスチャン・ジョン(Christian Jeune)副執行委員長は、「最初に映画を見た瞬間、良い映画だと思った。取り上げにくい素材を優れた演出力でうまく描いている。特に、俳優たちの演技には圧倒された。ドヒ役のキム・セロンは、将来が有望される女優だ。カンヌでの再会を期待したい」と語った。
フランスの日刊紙「リベラシオン」は、「繊細な演出と素晴らしい演技で暴力性がうまく表現されている。ゾクッとしつつも美しい場面と俳優たちの素晴らしい演技が光る」と話した。
チョン・ジュリ監督はこの映画のメッセージについて、「寂しい人同士互いを知ることができ、他の人と共感することができる。それがこの映画に込められた希望ではないだろうか」と語った。
映画「最後まで行く」で熱演するイ・ソンギュン(写真提供:ショーボックス)
18日に上映された「最後まで行く」は、午前の上映にもかかわらず、825の客席がいっぱいに埋まった。観客は終始、笑ったり拍手をしたり、映画を楽しんでいた。この映画は、不正を働く警察官であるコ・ゴンス(イ・ソンギュン)が母親の葬式の日に妻から離婚を求められる場面から始まる。警察で内部調査を受けていることを耳にしたゴンスは、興奮を抑えきれないままハンドルを握り、ひき逃げ事件を起こす。これを隠蔽しようと遺体を母親の棺桶の中に隠すが、謎の男から脅迫を受ける。この映画は、ほんの一瞬たりとも気を抜くことができず、最後までドキドキ・ハラハラの連続だ。
米国の映画雑誌『ハリウッド・レポーター』は、「爆走するサスペンスとブラックユーモアが融合し、全く予断を許さないスリルあふれる作品だ。エネルギーに満ち溢れ、魂を抜かれるローラーコースターのような映画」と評した。
英国の映画雑誌『スクリーン・デイリー』は、「新鮮でありつつも極限まで楽しませてくれる。精密に構成されたストーリー展開とセンスある脚本で映画から目を話せない」と評した。また、「映画の前半は鋭くも繊細につくられており、カンヌ映画祭の監督週間プレミアで注目された」と報じた。
「最後まで行く」のキム・ソンフン監督は、「6年間、受験生のようにこの作品に没頭してきた。観客に受け入れてもらい、これからもずっと映画を制作したい」と語った。
カンヌ国際映画祭の試写会に出席した映画「標的」の出演者と関係者たち。(右から)フレッド・カヴァイエ監督、チャン監督、キム・ソンリョン、ユ・ジュンサン(写真提供:CJエンターテインメント)
「標的」のイ・ジヌク(上)とリュ・スンリョン(下)(写真提供:CJエンターテインメント)
映画「標的」は、フランス映画「ポイント・ブランク」(2010)の韓国バージョンだ。この作品は、不正を働く警察の陰謀に立ち向かう特殊部隊出身の男と、思いもよらぬ陰謀に巻き込まれた医師が孤軍奮闘する物語だ。この作品は、ある日の深夜に起こった謎の殺人事件の濡れ衣を着せられ、追われる身となったヨフン(リュ・スンリョン)が交通事故で病院に搬送される場面から始まる。担当医師のテジュン(イ・ジヌク)はある日突然、怪しい男に襲われ、拉致された妻を救おうとヨフンとともに危険な行動に出る。
「標的」は23日午前にルミエール大劇場で開かれた試写会で、スタンディング・オベーションを受けるなど大好評だった。この日は、「標的」の原作映画「ポイント・ブランク」のフレッド・カヴァイエ(Fred Cavaye)監督が出席し、注目を集めた。カヴァイエ監督は、「原作と大きな違いはないが、それぞれのキャラクターの描写にかなり違った工夫が感じられ、ともて興奮した。チャン監督は、若くて才能あふれる監督だ。原作よりもうまく脚色されていて満足した」と評した。
(上から)「ドヒ」「最後まで行く」 「標的」のポスター
コリアネット イム・ジェオン記者
jun2@korea.kr