
済州市健入洞に再現された金萬徳の客主
済州島(チェジュド)は「三多島」と呼ばれる。
石、風、そして女の多い島という意味だ。
女の多い済州島でも最も名高い女性を選ぶとしたら金萬徳(キム・マンドク、1739~1812)の名が挙がらないことはない。
金萬徳は朝鮮時代の豪商であり医女(女性を診察するための婢身分の女医)だった。また、済州島民を干ばつから救うために私財を投げ打った人物でもあった。妓女出身という卑賎な身分に屈することのなかった彼女は、客主(ケクジュ、商人たちが往来し泊まった宿屋)を営み富を築き上げた。金萬徳を経由せずに済州島の特産品を手に入れるのは不可能と言われたほど、彼女と彼女の営む客主は名声が高かった。
1794年、済州島が深刻な干ばつに見舞われると、金萬徳はそれまで集めた全財産をはたいて良民(両班と賎民の中間階級、平民)らに穀物を分け与えた。「お国様も苦しい」と言われたほどの当時の時勢に、微賎な身分、それも女性が救恤を行った事実は遠く漢陽(ハニャン、ソウルの古称)まで広がり、当時の国王だった正祖(チョンジョ)の耳にまで届いた。正祖は金萬徳に内医院(朝鮮時代に宮殿の医薬を担当した官庁)の女医のうち最も高い医女班主という官職を与え、金鋼山(クムガンサン)遊覧という彼女の生涯の望みも聞いてやった。
200年の時が流れた今でも、金萬徳の善い行いと心遣いを称える様々な記念事業が行われている。そのうち、代表的なものが金萬徳客主と記念館の建立事業だ。とくに、金萬徳が営んでいた客主は昨年9月に跡地と考証された健入洞(コニプドン)の390㎡の敷地に8の藁葺きの家で再現された。展示用、宿泊体験用、飲食店用などの藁葺きの家で構成される客主は、済州島の伝統家屋の構造で再現されている。
訪問客は済州島のピントク(千切りした大根を入れたそば粉の餅)、モムクク(豚肉を煮込み、キムチやそば粉を入れたスープ)、コソリスル(アワで作った済州島の伝統酒)など済州島の民俗料理を味わうことができる。4月からは、朝鮮時代の客主と関連する物品の取引も再現され、鍛冶屋の体験など文化芸術イベントや工芸品・芸術品を販売するフリーマーケットも運営される予定だ
コリアネット ユン・ソジョン記者
翻訳:イ・ジンヒョン
写真:健入村協同組合、聯合ニュース
arete@korea.kr

金萬徳は豪商でありながら医女で、深刻な干ばつから済州島を救った善い行いで広く知られる