【文・写真=田尾秀子】
日本各地から飛行機で2時間前後で行ける韓国へ、私は敢えて時間を掛けて移動する船旅を選びました。今までに味わったことのない素晴らしい感動や、良い所をお伝えしたいと思います。
私は大阪から釜山まで定期運航している、韓国籍のクルーズ船で渡韓しました。
所要時間は半日以上掛かる19時間です。
釜山港国際旅客ターミナルにて 3月で引退するパンスタークルーズフェリードリーム号
今回私が乗船した船は、残念ながら老朽化のために4月の第一週目で引退することが決まっており、それ以降は新造船が運行します。
船自体は異なりますが、船旅の楽しさは変わらないと思います。
まだ船で渡韓されたことがない方々に船旅の素晴らしさが伝わり、ご参考になれば幸いです。
大阪国際フェリーターミナルから乗船
ターミナルには2時間前に到着し、まずパスポートを持って、カウンターまたはキオスク自動発券機を利用して乗船手続きをします。
その後乗船時間になったら、全ての荷物を持ったまま出国審査を通過という流れです。
飛行機の場合だと、搭乗手続き後は手荷物保安検査、出国審査を通過という運びになるので、船の方がかなりスムーズだと思いました。
但し、釜山港での出入国時には荷物検査は必須になります。
船の入り口やデッキには「乗った瞬間 始まる旅」と韓国語で書かれています。
船内の様子
初めての船旅に心を躍らせながら乗船すると、ピアノの生演奏で出迎えられました。
飛行機搭乗時にはない優雅な雰囲気です。
私がチェックイン時に乗客の割合を見てみると、過半数が韓国人でその他が日本人を含む外国人のようでした。
船内放送や掲示物は韓国語、英語、日本語で案内されます。
それに伴い、スタッフも多国籍です。
船内ロビーの様子 右側がチェックインカウンター
船内の施設はレストラン、エンターテイメントステージ、カフェ、コンビニ、免税店、マッコリの売店、大浴場、サウナ、アロマテラピーハウス、VIPルームがあり、充実した時間が過ごせます。
私は友人と一緒にスタンダードの2人部屋に泊まりました。
その部屋はインサイドルーム(窓なし)で、シャワーとトイレは無く、決して広くはありませんでしたが、ツインベッドとテレビがあるだけで快適に過ごせました。
客室は他にも4人部屋、6人部屋(ベッドあり、なし)やファミリールーム、スイートルームなどがあるようでした。
船内では飛行機のように長時間座ったままではないので、あちらこちらを散策したり、大浴場で入浴したりして楽しめました。
船内の楽しみ
船内での食事は朝夕2回、韓国料理がメインのビュッフェスタイル。どのお料理も美味しくて食べすぎるほどでした。
夕食は1時間半と時間が限られていたので、少し慌ただしい感じもしましたが、それにはちゃんと理由があったのです。
お代わりした後に写真を撮っていないことに気づいて撮った一枚。
それは、夕食後にレストランに併設されたステージでイベントが開催されるからでした。
催しはその時々によって変わるようですが、私が乗船した時は若者たちによるライブ演奏と、のど自慢大会、じゃんけん大会でした。
のど自慢大会は事前に参加者を募り、その時は韓国人と日本人の計6名が出場しました。観客の拍手により優勝者が決まります。
希望した方々のみが参加し、誰もが甲乙つけがたく、拍手をするのに悩むほどでした。
のど自慢大会の時には歌っている人を知らなくても、スマートフォンのライトをペンライトのように左右に振って、まるで本当の歌手のコンサートのように盛りあがり、とても楽しくて良い雰囲気でした。
じゃんけん大会には私も参加しましたが、あっという間に負けてしまい凄く残念でした。
じゃんけん大会では全員ニコニコ笑顔で、会場に活気が満ち溢れていました。
これらの2つのイベントには、豪華な賞品が用意されていました。
私はイベントを通じて、国籍に関係なく、同じ空間で楽しさを共有できることこそが船旅の良さだと実感しました。
船旅の感想
私は今回の渡韓で、船旅ならではの醍醐味を味わうことが出来ました。
乗船してから夕方と朝には、船内の大浴場でゆっくり湯船に浸かりながら、窓の向こうの海を眺めてのんびりするという、今までに体験したことのない贅沢なひと時を過ごし、心から寛げました。
また、普通なら車で通過する海上大橋は、船の場合だと橋の下を潜ることが出来るので、橋そのものを含む素晴らしい景色を楽しむことができました。
そして何よりも絶景なのは、デッキから見た、水平線に沈んでいく夕日や、段々と浮かび上がってくる朝日、街の灯りに遮られることのない満点の星空です。その景色には涙がこぼれそうなくらい感動しました。
往路では悪天候のため、綺麗に見えなかった明石海峡大橋が、復路ではとてもきれいに見えました。
私が体験した初めての船旅は、現代のスピード重視の時代において、たまにはゆっくり進むことも必要だということに気づかせてくれる貴重な旅となりました。
みなさんも機会がありましたら、ゆっくり船で渡韓してみてはいかがでしょうか。
水平線から段々と浮かび上がってくる朝日は、本当に素晴らしかった。
*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。
hjkoh@korea.kr