「国のためなら自分の身も命も捧げるイ・スンシン(李舜臣)将軍の精神を、世界の全ての人が見習うべきだ」
21日に開かれた観客との交流会で、映画「鳴梁‐渦巻く海」のキム・ハンミン監督はこう語った。観客動員数1600万人突破を記念して開かれたイベントで、キム監督は「1600万は夢のような数だ。どんなに感謝しても感謝しきれない。何度でもありがとうと言いたい」と感想を話した。また、困難な時代に国民の力を結集して勝利に導いたことから、李将軍を「統合と融和のアイコン」と表現した。
この日、会場に詰め掛けた観客は、キム監督を質問攻めにし、関心の高さをうかがわせた。「鳴梁‐渦巻く海」の中で、恐怖心を克服して味方を勝利に導いた李将軍の姿に勇気をもらい、手術を無事に終えたという観客は、自ら書いた手紙をキム監督に手渡した。キム監督は、この観客に直筆のサイン入りの本を贈った。
公開からわずか 21日目の8月19日に韓国映画史上最高記録を打ち立てた「鳴梁‐渦巻く海」は、1597年(宣祖30年)に李将軍がわずか12隻の船を率いて約300隻の日本軍に勝利を収めた鳴梁海戦を描いている。上映時間128分のうち61分に上る海戦シーンは、観客の視線を釘づけにするほど圧巻だ。
17世紀の朝鮮と中国の葛藤をモチーフにした「神弓」(2011)などを演出したキム監督は、以前から李将軍の物語を映画にしたいと思っていた。全羅南道順天市で生まれ育った彼は、地元に点在する様々な遺跡に触れ、幼少の頃から李将軍の生涯に関心を持っていた。「鳴梁‐渦巻く海」は、李将軍の生涯の中で最も困難だった時期に最大の成果を収めたその精神と活躍した姿が描かれている。
今後は、李将軍の「露梁海戦」や「閑山島海戦」も映画にしたいという抱負を語るキム監督は、次の作品も史劇になる可能性が高いと話す。
観客動員1500万人突破を記念して21日に開かれた観客との交流会に出席した「鳴梁‐渦巻く海」のキム監督(左)と司会を務めた聖心女子大学のソ・ギョンドク教授
‐「鳴梁‐渦巻く海」は、ロサンゼルス・タイムズなど海外メディアからも高い評価を受けている。感想は。あまりにも短期間の出来事に実感が湧かない。これから少しずつ実感が湧いてくると思う。韓国人は、世宗路に銅像を立てるほど李将軍を仰ぎ慕っている。もし、李将軍をテーマにした映画を制作すれば、世界の多くの人が李将軍という人物に共感してロールモデルにし、李将軍を慕うのではないかと思った。
- 今後、公開される国は。 インドネシアではすでに公開されており、イギリス、フランス、日本でももうすぐ公開される。冗談で主演のチェ・ミンシクさんに、「日本で公開されるときは舞台挨拶に行くぞ」といったら、「キム監督だけ行ってください」という返事が返ってきた。日本の関係者は、それなりに蓋然性があるため公開できるはずだといっていた。もし、日本での公開が実現すれば、そこには大きな意味があると思う。関心を持って見守る必要がある。
- この映画をぜひ公開したい国は。
北朝鮮だ。李将軍は融和と統合のアイコンだ。現代社会において地域間には多くの葛藤が存在するが、そんな時代だからこそ最も必要なのは融和と統合ではないだろうか。「このたまりにたまった恨みをどうすべきか」という台詞は、そうした点を念頭に置いて最後に入れた。南北の融和も同様だと思う。以前北朝鮮で制作された李将軍に関する映画を見たが、1970年代に韓国で制作されたものとよく似ていた。韓国も北朝鮮も、李将軍を慕う気持ちに違いはないようだ。
イベントに参加したある観客は、「この映画を見て恐怖心を克服する勇気をもらった。今日で5回目の観覧になる。感謝の手紙を渡したくて参加した」と話した
- 映画の中で亀甲船が鉄甲船でないのはなぜ。 映画に登場した亀甲船は、鉄甲船ではなく、木船に鉄の杭を打ったものだ。亀甲船に関する様々な説があり、どの説にするか選ぶ必要があった。朝鮮時代の水軍の代表的な戦闘船である板屋船よりも小さくなければならず、鉄で覆われていれば突撃船の機能を果たせない感じがするという助言もあった。歴史学者らの意見も様々だったが、木船に鉄の杭を打ったものという意見のほうが多かった。
- キム監督がイメージする「忠」とは。「忠」という字は、「中」と「心」で構成されている。私が好きで最も大切にしている言葉が「忠」だ。李将軍が最も愛したのが国と民族だ。李将軍は、2度にわたり無位で戦った。咸鏡道でもそうした。武科の殿試に合格したのもかなり後だ。青年時代の何らかの経験がそうさせたのは明らかだ。原則に基づき、大らかな心で民族を愛することができた力の源は、彼の「忠」の精神から湧き出たのではないだろうか。「忠は王に向かわず、民族に向かう」という台詞を自信を持って用いた。
‐『乱中日記』によると、白兵戦はしていない。板屋船は非常に船高が高く、白兵戦は不可能だ。史実と異なる部分が多いのはなぜ。 歴史に関心を持ってもらうことは、とても嬉しいことでありとても結構なことだ。実際に船の上では白兵戦は行われなかったはずだ。李将軍が乗った船を囲んだ3隻の護衛船では白兵戦が行われたようだ。映画をより劇的にするために、李将軍が乗っていた船の上での白兵戦のシーンを入れた。
- 歴史的な観点から李将軍をPRするとしたら、どんなことをアピールしたいか。李将軍の強靭な精神力だ。12隻の船で約300隻の船を打ち負かした鳴梁海戦は、ある意味では唯一無二の海戦だ。国が全面的に支援した戦争ではなく、自力更生した海戦だった。妬みと恨みを買いながらも、国のために自分の身も命も捧げた李将軍の精神を世界の全ての人が見習うべきだ。
ルー・ゲーリック病撲滅のための「アイスバケツ・チャレンジ」に参加したキム監督(左)とソ教授が氷水をかぶっている
映画「鳴梁‐渦巻く海」のポスター(写真提供:Two Rabbit)
記事:コリアネット イム・ジェオン記者
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