文化

2023.11.15

会見に臨む小説家ハン・サンさん=14日、ソウル、文学トンネ

会見に臨む小説家ハン・ガン氏=14日、ソウル、文学トンネ


[ソウル=シャルル・オデゥアン]

「歴史について語ること自体が、われわれが同じ人間として共有している本性に対する問いかけなので、特に説明することなく、小説だけで理解し、感情を共有していると感じました」

14日、ソウル市内の韓国放送会館で開かれた記者会見で、小説家ハン・ガンさんはこう語った。ハンさんは9日、自身の長編小説「お別れしない(原題)」で、フランスの4大文学賞と呼ばれる「メディシス賞」の外国文学賞を受賞した。

ハン氏は「(フランスとは)言葉も文化も歴史も異なるが、人間の暴力性とかジェノサイドの経験とか、そういうものは人間であればみな抱えている。だから(フランスの読者と)同じ感情を共有できると思った」と話した。

韓国の作家がメディシス賞の外国文学賞を受賞するのは初めて。ハン作家は「(この小説が)完成するまで7年もかかったが、今でも私にとってはすごく身近に感じられる小説なので、受賞の知らせを聞いて、何よりうれしかった」と受賞の感想を述べた。

現地での授賞式はどうだったかと聞かれると「(固い雰囲気の)授賞式はなく、レストランで写真を撮って、シャンパンを飲んだだけ」とし、「自由な雰囲気で、楽しかった」と笑顔で答えた。

フランス語版のタイトルは「不可能な別れ(Impossibles adieux)」。チェ・ギョンラン氏とPierre Bisiou氏が共同で翻訳作業を行い、今年8月にフランス出版会社「Grasse」が初めて翻訳版を出版した。ハン作家は「『お別れしない』という文章は、この行為の主体が私であるかもしれないし、あなた、または彼・彼女であるかもしれない」とし、「フランス語版のタイトルは、主語を特定せず、絶妙に(このニュアンスが)生かされていて、とてもいいと思う」と話した。

この作品は、「不可能な別れ」というタイトルで、来年の後半か再来年の初め頃に出版される予定だという。

今後の執筆については「歴史小説ではない、命に関する小説を書きたいと思っている」と話した。

2021年出版の「お別れしない」は、済州島で1948年に起こった「4・3事件」を題材にした作品。同事件は、韓半島を分断する選挙実施に反対した民衆の一部が、武装蜂起して起こったもの。それにより、軍や警察が数万人の島民を虐殺した。この悲劇を、「ギョンハ」「インソン」「ジョンシム」という3人の女性の視点で描いた。フランスのほか、台湾でも今年、出版された。

記者会見で記念撮影をするハン・ガン作家=14日、ソウル、シャルル・オデゥアン撮影

記者会見で記念撮影をするハン・ガン作家=14日、ソウル、シャルル・オデゥアン撮影


caudouin@korea.kr

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